行程録 その5

最後に、二次検査でようやく登場となる、国語について。

 

【継続的な取り組みー作文、漢字、読書】

国語に関して長女が継続的に取り組んでいたのは漢字、作文、そして読書でした。

 

漢字に関しては夏休みから毎朝起きがけに20分程度、計算問題と漢字の書き取りを行うようになり、受検日まで続けていました。

 

作文に関しては、五年生から通い始めた東葛中受検コースで「作文教室」という教材を扱っており、塾の授業の中で継続的に取り組んでいました。

 

そしてこれは、対策というよりは長女の趣味ですが、長女は本が好きで、1日10時間以上勉強していた夏休みにも、読書で息抜きをしていました。受検直前の追い込みの時期には、短時間に読める星新一氏のショートショートを読んでいたようです。

 

【漢字、作文、読書の効用】

上記にも関わらず、長女が適性検査で一番苦手としていたのが実は適性検査2-2、つまり国語でした。

 

それでは上記三つはどのように役立ち、あるいは役に立たなかったのでしょうか?

 1.漢字

まず漢字ですが、東葛中適性検査の場合、漢字の書き取りのような、漢字の知識そのものを問うような問題は出題されません。

 

但し文系総合、国語共に記述問題が多く出題され、その解答の中で漢字の間違いがあったり、小学校で習う範囲の漢字がかけない(ひらがな表記)と減点の対象になるようです。

 

漢字書き取りの効果はこのように間接的なものに止まりますが地味に効いてきますので、計算問題演習と合わせて習慣づける事をお勧めします。

 

2.作文

次に作文ですが、直接的には文章の構成力の向上を通じた記述スピードアップ。つまり、自身の考えや幾つかの事柄をまとめ上げて伝える際の自分なりの文章の型の習得に伴う記述問題への対応スピードの向上。

間接的には、実際に伝えるための作業を繰り返す事で他人の文章を読む際に勘所がわかるようになる事、そしてその事を通じた読解スピードの向上。という効果があったと思います。

 

3.読書

 実は読書は私にとって長女との重要なコミュニケーションツールになっていて、長女が読んでいる十代向けの児童文学を私が読んだり、私自身読んでみて面白かった本(こちらはもっぱら大人向けの本)を長女に紹介したりする中で長女が読んでいる本は大体私も読んでいたりします。

そして、長女が作文教室で書いた作文は実は私もこっそりと読んでいたのですが、その中で感心させられたのが、好きな作家から受ける文体の影響です。

 

「ああ、こんな文章構成や接続詞の使い方、文章の結び方は長女が好きなあの作家の文章そっくりだな。」と思うことがしばしばあるわけです。

 

よく作家になる人は、「文章をよく書く人」である前に、「文章を誰よりも読む人」だと言いますが、なんとなくその意味がわかる気がします。上手な文章を書く人、印象的な文章を書ける人というのは、何よりもまず、そんな文章に数多く触れている人なわけです。

 

長女の読書はそのような形で、間接的にではありますが、作文技術の幅を広げるという観点で効果があったと考えています。何よりも、作文と相まって、無意識に好きな文体を真似て文章を書く、という楽しみに触れ得たことは、適性検査という枠を超えて、良い経験になったのではないでしょうか?

 

 4.それでも足りないもの

上記のように書くと、さも長女が国語を得意にしていたように聞こえます。実際、学校のテストや塾で定期的に受ける学力テストでは長女も国語を得意としていたのですが、適性検査、とりわけ千葉県の適性検査を想定した模試では、いつも足を引っ張っていたのです。

 

何が足りなかったのか?それを考える前に、適性検査で「どこまで求められているのか?」について考えてみましょう。

 

【解答例から類推する読解問題の要求水準】

出題者の要求水準を類推するため、平成27年度適性検査2-2における設問の解答例を見て行きます。

その前に素朴な疑問ですが、果たして市販の過去問題集に付いている解答は信用できるのでしょうか?これから解答例を頼りに出題者の題意を推し量ろうと言うのに、その解答を出版社(あるいはアルバイトの学生)が作成しているとあっては元も子もありません。

上記に対する答えは「信用して良い」ということのようです。これは誉田進学塾

誉田進学塾グループのWeb Site

が主催するTOP-Sの進学研究会で質問した際に教えていただいたのですが、いわゆる市販の過去問題集の解答は出題者側が開示する解答をそのまま掲載しているとのことでした。

以下は平成27年度千葉県適性検査2-2において出題された設問と、出題者側が開示した解答例です。

 

[設問]

雑草にとって「小さな花を咲かせること」は、どのような結果につながると筆者は考えているのでしょうか。雑草の花の咲かせ方にふれながら、書きなさい。

 

[解答例]

雑草は、小さな花を1つでもいいから、まず咲かせることで種子を残し、それが芽を出し、花を咲かせ、過酷な環境下でも命をつなぐ。また、小さな花をたくさん集めて咲かせ、大輪の花に負けない大きさにすることで、昆虫に発見されやすく、受粉の機会を増やす。このように、雑草にとって「小さな花を咲かせること」は、生き残ることやその可能性を広げるという結果につながると筆者は考えている。

 

解答例では前半部分で雑草の花の咲かせ方を文中のキーワードのコピペ、言い換えで説明した後に、「小さな花を咲かせること」がもたらす結果について下線部のようにまとめています。その意味で下線部はいわば本設問の核心部分ですが、実は下線部には本文中で使われる言葉が一語も含まれていません。

 

つまり、適正検査の国語では「文意を汲み取り、本文中にある言葉のコピペや言い換えレベルではなく、自分で適切な言葉を選んでまとめる」力まで問われているのです。

 

言葉で言ってしまうと簡単ですが、上記はとても難易度の高い要求水準です。乏しい自身の経験に照らすと、読解問題に関してこのような解答が書けるようになれば、大学受験まで十分に通用するレベルではないでしょうか?

 

【結局良質の読解問題を解くことによってしか鍛えられない】

一次検査後、長女はこれまで手付かずだった国語をどうにかするために問題集を数冊潰しましたが、千葉県適正検査対策としてはあまり役に立たなかったというのが正直なところでした。

継続的に行っていた漢字、作文、読書にしても直接的な効果は得られません。作文は自身の考えを言葉に具体化する作業ですが、なにかよほど哲学的なテーマが与えられるのでもない限り、作文で「第三者が文章によってぼんやりとイメージさせる題意を具体的な言葉にする。」に相当する作業を行うことは稀で、通常はより簡単な作業に終始していることでしょう。

読書はほとんどの場合、筆者が文章によってぼんやりとイメージさせてくれるものの余韻を楽しんで終了であり、「読書感想文を書け」とか、「この本の批評、解説を書いて欲しい」というのでない限り、そのぼんやりしたものを言葉で具体化しようとすることは稀でしょう。

結局長女の読解力の向上に役立ったのは、千葉県を中心とした良質の過去問演習と、丸付けの段階での議論(長女の解答ではなぜいけないのか?解答例以外にどのような書き方があるか?問題文の解釈の仕方など)でした。

 

過去問題演習にあたっては、千葉県適性検査の過去問題(こちらは塾の授業)、銀本、都立の過去問等を用いました。

また、独習用には以下問題集が解説も丁寧であり、参考になりました(長女も何冊か解いた問題集のうち、以下は手応えがあったようです)。同問題集は、似たような問題傾向の学校を探すためにも重宝しました。

 

 https://www.sogensha.co.jp/productlist/detail?id=1623

「とまつ式公立中高一貫校合格をつかむ作文トレーニング」