振り返り「長女との対話」編 その3

【国語力は全ての基本】

東葛中受検に取り組まれる小学5〜6年生のお子様にとって最も基礎的な学力は何かと問われれば、それはやはり国語力だと考えます。

 

千葉県立中の適性検査で出題される理系総合問題は非常に難しく、お子さんたちはそんな問題をスラスラ解ける「地アタマの良さ」のようなものに憧れがちですが、国語力がその「地アタマ」を養う上で非常に重要な役割を果たしていることは間違いありません。

 

【国語は論理力を鍛える】

「論理力が問われる教科」といえば数学を思い浮かべる方が多いと思いますが、私たちが論理を扱うツールとしてまず最初に手にするものはやはり言語であり、特定の目的(伝えたいこと)に沿ってそれらを組み合わせ、並べ換える文章なのではないでしょうか?

 

【裁判官の論理力】

論理力というものについて考えさせられるエピソードとして特許関係の仕事に携わっている知人から聞いたお話を紹介します。

 

その知人は仕事柄特許を巡って裁判所(知財高裁)で争うことをよくするのですが、いつも、必ずしも係争案件の技術的専門家ではないはずの裁判官が専門家の目から見ても妥当な判決を下すことに驚くそうです。

 

もちろん、知財高裁にはこの手の分野に精通した調査官がいて、裁判官も知財係争関連に詳しい方なのだろうとは思いますがすごいことです。

 

典型的な技術屋で、ゼネラリストというものを普段あまり信用していない知人も、「やはり裁判官にもなる人は優秀なんだなあ」と漏らしておりました。

 

裁判官になる人には若い頃猛勉強が過ぎて車の免許を取り損ね、運転できない人もいると聞きます。それだけ労力をかけて積み上げているものは単なる法律や判例の知識ではなく、それらコトバの訓練によって鍛え上げられた論理力であり、判断力なのでしょう。

 

【本を読む習慣とエッセイポートフォリオ

前置きが長くなりましたが、今回はこの「国語力」に深く関わる、

・本を読む習慣

・エッセイポートフォリオ

について書いてみたいと思います。

 

ポートフォリオ」というのは普段あまり聞きなれない言葉ですが、元々は書類を入れておく紙ばさみや折かばんを意味するもので、その中に投資家・銀行家であれば有価証券、画家・芸術家であれば自分の作品を持ち歩くことから、「財産目録」、「作品集」などと訳されます。

エッセイポートフォリオとはまさに自分がこれまで書いてきたエッセイ集のことです。

現在、大学入試改革の一環として高校での学びをデータベース化するJapan e-portfolioなるものが始動しているようですが、これはまさに高校生活における学びの「財産目録」ないしは「作品集」、すなわちポートフォリオです。

つまり、適性検査対策として積み上げてきた作文をポートフォリオとして管理し、読み解くことでお子さん自身が自分を理解する一助になるし、適性検査二次試験対策にもなるのではないか?という思いつきなわけです...

https://jep.jp/statics/about.html

 

【本を読む習慣と長女との対話】

長女の読書好きを促したきっかけとして、斎藤惇夫氏の「冒険者たち」との出会いがあります。

 

ブログをお読みの方には小学生の頃、テレビ東京の再放送で夕方に放映されていた、どぶネズミ「ガンバの冒険」というアニメをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。「冒険者たち」はそのアニメの原作であり、「グリックの冒険」、「ガンバとカワウソの冒険」に並ぶ斎藤惇夫氏三部作の一つです。

 

長女には4つ下の弟がいるのですが、長女が小学三年生のころ、幼稚園児の弟に絵本の読み聞かせをする母親の姿をみて赤ちゃん返りする時期がありました。

そこで寝る前に自分が中学生のころに愛読していた「冒険者たち」の読み聞かせをするようになったのです。

冒険者たち」には力持ちのヨイショ、知恵者のガクシャ、足の速いイダテンを始め、イカサマ、バレット、バス、テノール、アナホリ...と個性あふれる15匹の仲間たちが登場します。

これら15匹の仲間たちをやや大げさに声色を変えて読み聞かせをしたところ長女は面白がり、この物語をとても気に入りました。

会社の都合で帰りが遅くなり読み聞かせができない日があると、長女は自分で物語を読むようになったのです。

冒険者たち」の読み聞かせが終わると長女は「グリックの冒険」や「ガンバとカワウソの冒険」を自分で読むようになりました。どちらも300ページはあるとても読み応えのある長編なのですが、長女はこれをいつのまにか読了してしまったのです。

自分が読み終えた分厚い本をみて長女は自信をつけたようで、その後貪るように本を読むようになりました。

 

と言っても、長女は別に「勉強」という感覚で本を読んでいたわけでなく、文章に書かれたお話を想像しながら物語を読み進んでいくのが純粋に楽しかったようです。

 

こんにち少し大きな書店の児童書コーナーに行くと、実に様々な児童書が溢れていることに驚かされます。そんな児童書の中から自分の好きな本を器用に探してきては、そのシリーズ、作家の本を読み漁っていくわけです。

 

【おススメ本のリスト】

以降、小学校六年生までに長女が見つけ出してきて読んだ主なものを簡単なコメント付きで紹介します。

 

斎藤惇夫

グリックの冒険

冒険者たち

ガンバとカワウソの冒険

寡作なこの作家は上記を含めて5冊しか作品を発表していないと聞きますが、上記3冊は薮内正幸氏のイラストと共に広く知れ渡った、児童文学の金字塔と言えます。

 

はやみねかおる

・都会のトム・ソーヤー シリーズ

・名探偵夢水清志郎事件ノート シリーズ

・名探偵夢水清志郎の事件簿 シリーズ

・怪盗クイーン シリーズ

・虹北恭助 シリーズ

そして誰もいなくなったアガサ・クリスティ

著者のはやみねかおる氏は教育学部数学科を出た小学校教師としての経歴を持つ人で、「読書嫌いな子も思わず読みたくなるような面白い本を自分で書いてみよう」という動機で作家への道を踏み出しました。

長女はこの作家が大好きで、著作はもちろん、ネットで集めたのか、作家に関する色々なエピソードまで良く知っています。

おそらく「性格が合う」といったレベルで相性が良いのでしょう。

そんな作家と出会えれば、読書も進みますね。

 

あさのあつこ

・No.6 シリーズ

・ミヤマ物語 

The MANZAI

あさのあつこといえば「バッテリー」シリーズですが、長女はNo.6、ミヤマ物語、といった著者の社会派としての一面が色濃く出た作品から入って行きました。時期もちょうど5年生に差し掛かる頃で、この辺りから読書の傾向も変わってきます。

 

宮部みゆき

・ステップファーザー・ステップ

パーフェクトブルー

・心とろかすような マサの事件簿

宮部みゆきの初期作品群(「火車」〜「理由」までの時期)は私と妻も好きで本棚に置いてありますが、長女が手を出せるのはまだ上記のような軽いタッチの作品までのようです。

 

恩田陸

・6番目の小夜子

夜のピクニック

・常野物語 シリーズ

・ミツバチと遠雷

直木賞を受賞した「ミツバチと遠雷」は正確には小学校を卒業後の春休みに読みました。ページ数も多く、この時期に読むにしてはチャレンジングな本ですが、こういった本も読めるようになったようです。

 

以上の本は、お子さんが本と向き合うきっかけを作るのにうってつけの、面白いストーリーばかりです。

 

話が大分長くなってしまいましたので、「本を通じた長女との対話」、「エッセイポートフォリオ」については次回のお題とさせていただきます。