振り返り「長女との対話」編 その4

【本を通じた長女との対話】

長女も小学生高学年になってくるとなかなか親と会話を持たなくなってきます。

 

適性検査の勉強を見てやる時間はその意味で長女との対話を行う貴重な機会でした。学校や塾での出来事はなかなか話をしてくれない長女も、適性検査の過去問や対策問題については自分の考えをぶつけてくれます。

 

その意味で適性検査対策は長女とのコミュニケーション形成にとても貢献してくれたのですが、もう一つ、コミュニケーションを取るために試していたことがありました。

 

それが、「本を通じた長女との対話」でした。簡単に言ってしまえば、

 

書店で見つけたり、知人に勧められて読んでみて面白かった本を何気なく長女にも読ませ、簡単な感想を交わす。

 

というものでした。

 

【見え見えな手段で哀れみを誘う】

「何気なく長女にも読ませ」というところがなかなか難しいのですが、私は「長女が勉強に使う居間のテーブルに無造作に置いておく」という手段をよく使いました。

 

ハッキリ言って「見え見え」なのですが、それでも長女に「読んでみなさい」というよりはきっとはるかにマシなのです。

「お父さんまた見え見えなことしてる」という哀れみの感情に加えて、本の装丁やタイトルから少しでも興味を感じてくれれば、かなりな確率で手にとってもらえます。

 

そして読み終わった頃合いに、「登場人物の中で誰が一番好き?」とか、「あの場面のあの人の行動ってどう思う?」とか、一言二言で答えられるような感想を聞くだけでも、なんとなく長女のモノの考え方、感じ方が伝わってきますし、本人に他人にぶつけてみたい考え方が湧いていればポツポツと話してくれます。

 

でもそれも、「お父さんも読んだんだ、仲間だね。」という気持ちがないとダメなので、親御さんご自身も読んでいらっしゃることが大前提です。

 

以下は、こんな形で長女との会話に使った本を、簡単なコメントを添えて紹介します。

 

藤原和博

・はじめて哲学する本

リクルートメディアファクトリーといった「クリエイティブ系」ビジネスの最前線で経験を積み、杉並区の中学校の校長に就任した著者による「哲学する本」です。

哲学というのはカントやシュレディンガーのこ難しい本を読んで難しい言葉を操ることではなくて、身近にある「何故?」に一歩深く踏み込んでみることなんだ、ということがわかる本です。

小学5年生の頃に紹介したところ長女はえらく気に入り、同時にこれまでよりちょっと扱いにくい子にもなりました。

担任の先生にはなんでもハイハイと言うことを聞く良い子から、「なぜ先生はこういう事を言うのか?」を考えるちょっと嫌な子になったかもしれません。

 

三浦しをん

・風が強く吹いている

とにかく楽しめる、一級のエンターテイメント作品です。タスキをつなぐ個性あふれる10人のメンバーの中で「誰が好き?」と聞いてみてください。その答えにきっと、「ほほー」と頷かざるを得ません。

 

佐藤多佳子

サマータイム

・黄色い目の魚

・一瞬の風になれ

性的描写などもあって若干読ませるのをためらいましたが、長女は割とその手のものも堂々と受け止めてしまうので、読ませてしまいました。その辺はお子さんによって受け止め方が違うので、お子さんに読ませる前に親御さん自身、実際に読んで確認する必要はあると思います。

長女は絵を描くのが好きなのですが、「黄色い目の魚」にはその辺りの描写などもあって気に入ったようです。

「一瞬の風になれ」は3冊ものの結構な長編でしたが、一気に読み上げていました。

 

市川朔久子

・夜の美容院

・ABC!曙第二中学校放送部

・小やぎのかんむり

この作家の作品に登場するのは皆、親や同級生の仲間の何気ない一言に深く傷つけられ、その瞬間から何かを失ってしまった女の子です。

受検への親の手助けは逆に言えば親の期待感の投げかけでもあります。

長女は物語の中で言葉を失ってしまったり、体が発するSOSを無意識に受け止めきれなくなる女の子に深く共感したようで、「この作家が描く女の子が好き」と言っていました。

 

上橋菜穂子

・鹿の王 シリーズ

獣の奏者 シリーズ

・守り人 シリーズ

こちらは長女が中学生に上がってから見つけたのですが、小学生にも大人にも楽しめるファンタジーとして世界中を見渡しても引けを取らない作品群だと思いますので紹介します。

著者は文化人類学者であり、また医学にも造詣が深く、物語の世界観の描写が非常に巧みです。これは間違いなくオススメです。是非一度お手にとってご覧ください。

 

度々の先送りで恐縮ですが、今回はここまでとします。次回は「エッセイ・ポートフォリオ」について述べさせていただきます。