必ず目を通しておきたいおススメブログ(その2)

2年前、公立中高一貫校受検の情報が少なくてあれこれとネットを漁っていた時には心に響くブログをいくつか知っていたのですが、何度かご紹介したゆず母さんのブログに出会って以降、そちらに頼りきりでそれらのブログの場所を忘れてしまっていました。

 

でもみなさんになんとか紹介したいと思い、探してみたところ、かなり気に入っていたブログが見つかったので以下の通りご紹介致します。

 

公立中高一貫受検体験記その1

https://blogs.yahoo.co.jp/momumo2002/64510284.html

 

公立中高一貫受検体験記その2
https://blogs.yahoo.co.jp/momumo2002/64510319.html

 

公立中高一貫受検体験記その3
https://blogs.yahoo.co.jp/momumo2002/64510350.html

 

公立中高一貫受検体験記その4
https://blogs.yahoo.co.jp/momumo2002/64510390.html

 

公立中高一貫受検体験記その5
https://blogs.yahoo.co.jp/momumo2002/64510486.html

 

このブログでは具体的な勉強法への言及が充実しており、

 

・親御さんに適性検査問題をご自身で解くことを進めている事

・独習に向く解答・解説に詳しい問題集と、親御さん、塾の先生のサポートを必要とする問題集に分け、それぞれ対策を切り分けている事

・解き直しノートの作成

・基本的に過去問題を対策の中心に据えている事

 

など、長女の受検の際に参考にさせて頂いた点が多いほか、個別指導を上手く活用されている点、受検をお子様とのコミュニケーションに上手に活用されている点がオススメです。

 

読解力って何?(その3) シミュレーションからわかる事

前回は、様々な仮定の下で受検者の能力の散らばりと問題の種類に応じた正答率、その不確実性などに関する数量的な関係性を表すモデルの構築を行い、

  • 模試偏差値70以上はかなり高い合格率になる
  • 模試偏差値60から70未満については、合格率は偏差値によらず50%近辺となっていて偏差値と合格率の間に有意な関係性が見られない(無相関) 

という東葛中受検における模試偏差値別合格率の特徴や、

  • 平均点20点台、ボーダーライン50点前後

という適性検査での得点の散らばりかたの特徴を再現しました。

 

モデルの良いところは、モデルを構成するいろいろな変数(パラメータなどと言います)を変えて結果の変化を確認する事で、モデルが表すメカニズムをより深く知ることができるところにあります。

 

今回は、前回構築したモデルのパラメータを変え、東葛中適性検査のあれこれについて考えてみます。

 

<模試偏差値と合格率の無相関性を産むもの>

上記について、当初私が想像していたのは

「千葉県の適性検査問題が非常に難しいにもかかわらず、模試の問題が易しい、あるいは質的に本番の検査問題と乖離してしまっているために、その模試で計測される偏差値がモノサシとして上手く機能していない。」

というものでした。

今回のシミュレーションでは、前段の

「千葉県の適性検査問題が非常に難しいにもかかわらず」

に対応するものとして、

     問題A :能力値と正答率が比例

     問題B :能力値が閾値を超えないと正答率が上がらない

の2種類に分けた上で、その配分比率について

    模擬試験 :問題A  8割、問題B  2割

    適性検査 :問題A  2割、問題B  8割

とする事で表現しました。

ここまでの仮定から、

「その模試で計測される偏差値がモノサシとして上手く機能していない。」

という結果はきれいに再現されます。

以下は、上記仮定のもとに再現される模試偏差値と真の偏差値の対応を表すグラフです(「受検者の能力の期待値はあらかじめ決まっていて、数値化できる」という仮定からシミュレーション上の計算としてこのような対応を考えることが可能となります)。

 

f:id:yoitsuki709:20180714055517j:plain

このグラフからは、「真の偏差値70を持つ同じ個人が模擬試験では偏差値73と判定される」事が読み取れます。

模試偏差値が適性検査を受検した際の偏差値を正確に計測するとすればグラフはきれいな45度線を描くはずですが、問題Bの正答率が上がり始める閾値あたりから上方にシフトし、適性検査での偏差値に対して模試偏差値は過大に計測されるのです。

 

<正答率の不確実性が鍵>

たしかに

「千葉県の適性検査問題が非常に難しいにもかかわらず、模試の問題が易しい、あるいは質的に本番の検査問題と乖離してしまっているために、その模試で計測される偏差値がモノサシとして上手く機能していない。」

ということはキレイに再現されました。

しかし、上記だけでは「模試偏差値と合格率の無相関性」は再現されません。無相関性を再現するために決定的に重要なのは、実は「正答率の不確実性」なのです。

以下、順を追って見て行きましょう。

 

シミュレーションでは、 

  • 問題Aには正答率の不確実性は存在せず、いつでも能力値によって決定される期待値通りの正答率が実現する
  • 問題Bには正答率の不確実性があり、いつも期待値通りの正答率が実現するとは限らない

と仮定し、問題Bについては不確実性の大きさを表すパラメータを設定しました。

 

この不確実性を表すパラメータは、能力値ごとに異なる設定をしており、「問題Bの正答率の伸びが高い能力値(偏差値60から70;グラフ横軸の1から2に相当)に位置する受検者ほど値が大きくなるような設定になっています。

 

https://moro241.files.wordpress.com/2018/06/pcagrowth1.pdf

 

<段階的シミュレーション>

「模試偏差値と合格率の無相関性」を生み出す最大の要素が何かを調べるために、正答率の不確実性を表すパラメータについて、以下のように段階的な設定を行い、合格率のシミュレーションを行います。

 

  1. 不確実性は存在しない
  2. 問題Bの正答率に小さな不確実性を仮定(但し、不確実性は能力値に関わらず一定)
  3. 問題Bの正答率に大きな不確実性を仮定( 但し、不確実性は能力値に関わらず一定)
  4. 問題Bの正答率に小さな不確実性を仮定(不確実性は正答率の伸びに比例)
  5. 問題Bの正答率に大きな不確実性を仮定(不確実性は正答率の伸びに比例)

 

無相関性が、「正答率の不確実性が大きい中で一発勝負を行わなければならない」ことと深く結びついていることが想定されるため、合格率を計算する際のシミュレーション回数は5回と設定しました。

 

 <シミュレーション1>

f:id:yoitsuki709:20180714065933j:plain

正答率に不確実性がなければ、今回のシミュレーションは「1000人の受検者のうち、上位12%以内の人が合格する。」というものですから、最初から合格する人は「真の偏差値」で62以上の人と決まってしまいます。

ですので模試偏差値区分別の合格率に関するボックスプロットも、模試偏差値区分55〜60までは合格率0%でフラット、模試偏差値区分60〜65の区分では合格率0%から100%までばらけ、模試偏差値区分65〜70の区分より大きくなると100%でフラットな形状となります。

 

<シミュレーション2>

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 <シミュレーション3>

f:id:yoitsuki709:20180714070059j:plain

<シミュレーション4>

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不確実性を入れることで各偏差値区分の合格率に散らばりが発生します。不確実性の大きさによってボックスプロットの幅が小さかったり大きかったりしますが、偏差値区分と合格率の関係は比例関係を保っています。

<シミュレーション5>

f:id:yoitsuki709:20180714070243j:plain

 偏差値60から70の区分で模試偏差値と合格率のあいだに関係性が見られなくなっています。

 

以上のことから、模試偏差値のモノサシとしての適切性だけでは模試偏差値と合格率の無相関性を再現することはできず、「能力値別正答率の不確実性」と「不確実性の不均一性(特定の模試偏差値ゾーンで不確実性が大きくなる)」の両方が必要となることがわかりました。

 

それではこの、能力値別正答率の不確実性」と「不確実性の不均一性」は何故起きるのでしょうか?

次回はシミュレーションから離れて、このことについてじっくり考えてみることにします。

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

読解力って何?(その2):シミュレーションを用いた分析

【基礎的読解力調査における興味深い特徴】

 前回、新井氏の著作「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」から、新井氏が実施した基礎的読解力調査における「イメージ同定問題」の能力値別正答率と、適性検査模試における模試偏差値と東葛中への合格率の関係との類似性についてご紹介しました。

 

 「イメージ同定問題」とは、「文章の正確な理解力に加え、図やグラフの意味を読み取る能力」を測るための問題であり、新井氏によれば、主語と述語、修飾語と被修飾語の関係を問うような「係り受け問題」などと異なり、現在のAI技術ではまったく歯が立たない分野です。

 

 新井氏によれば、すでにAIが得意としつつあるような係り受け問題では能力値と正答率の関係が右肩上がりとなりますが、イメージ同定問題では非連続的な関係、すなわちある閾値以下の能力値では能力値に関わらず正答率は横ばいで、閾値を越えると正答率が能力値に比例する関係が見られるということです。

 

 上記が、適性検査模試受験者の偏差値別合格率に見られる、

 

・模試偏差値70以上はかなり高い合格率になる

・模試偏差値60から70未満については、合格率は偏差値によらず50%近辺となっていて偏差値と合格率の間に有意な関係性が見られない(無相関)

 

という特徴に似ている点に私は興味を持ちました。

 

【模試偏差値と合格率の無相関性】

 私はこの、「模試偏差値と合格率の無相関性」こそが千葉県適性検査に挑戦するご家庭の悩みの根源であると同時に、千葉県適性検査にある種の畏敬の念をもたらしているものであると考えています。

 

 それは、お子さんの努力の方向性が正しいのか、あるいはそもそも「努力は報われるのか?」という不安を惹起しますし、また一方で、非常に訓練された私立中学受験組でも容易には合格できない検査として認知され、「単純に偏差値では測れない学校」との評価をもたらしているように思います。

 

 そのような観点から、この「模試偏差値と合格率の無相関性」を生み出しているものを是非とも解明してみたいと考えるわけです。

 

【無相関性のメカニズムをシミュレートしてみる】

  そこで今回は「模試偏差値と合格率の無相関性」を解明する方法としてその数量的な関係について仮説(モデル)を立て、シミュレーションを行ってみました。

 

  この、「模試偏差値と合格率の無相関性」を生み出すメカニズムですが、まず最初に、

 

<受検者の能力の散らばりかたに関する仮定> 

 まず受検者の能力に関して、

 「試験、検査を受ける人は固有の能力を持っていて、その能力を数値化できる。」

と仮定します。

 横軸に能力値、縦軸に各能力値を持つ人の数をとってグラフにしたものを度数分布と呼び、その背後にあってその度数分布を生じさせるメカニズムを「確率分布」などと呼びますが、ここではこの能力値の度数分布は平均値付近でピークをつけてなだらかな左右対称の裾野を持つ富士山のような形をしている(正規分布)と仮定します。

 

https://moro241.files.wordpress.com/2018/06/rplot_hist.pdf 

<能力値と正答率との関係が異なる2種類の問題>

 次に、試験、検査を構成する問題には

・能力値とその問題に対する正答率が綺麗に比例するような問題(A問題)と、

・一定の能力値に達するまでは能力値によらず正答率が低く、一定の能力値を超えるとその正答率が能力値に応じて上昇するような問題(B問題)

の2種類がある

 

https://moro241.files.wordpress.com/2018/06/logit.pdf

と仮定します。

 基礎的読解力調査で言えば、問題Aは「係り受け問題」、問題Bは「イメージ同定問題」に対応します。また、一般的な適性検査模試は問題Aの割合が多い試験、千葉県の適性検査は問題 Bの割合を多く含む検査であると言えるでしょう。

 

<正答率の不確実性> 

 先ほど能力値と正答率の関係に関して仮定を置きましたが(モデル化)、これはあくまで同じ個人が何百回と試験、検査を受けた場合に平均的に現れる正答率(これは「期待値」などと呼ばれます)であって、実際には出題された問題に対する得意・不得意や当日の精神状態、体調に応じて正答率は変化するものと考えられます。

 自身の経験と長女の受検を通じて得られた知見から、問題Aのようなタイプの問題はこの正答率の不確実性が比較的小さく、期待値通りの正答率を得られやすいと考えます。今回のシミュレーションでは思い切って、問題Aには正答率に関する不確実性はない(いつでも期待値通りの正答率が得られる)と仮定してしまいます。

 また同様の知見から、問題Bのようなタイプの問題は正当率の不確実性が高く、それはとりわけ、正答率が大きく伸びる時期(以下のグラフを参照)において言えると考えます。

 

https://moro241.files.wordpress.com/2018/06/pcagrowth1.pdf

 今回のシミュレーションでは問題Bの正答率に関する不確実性は、正答率の伸びに比例して大きくなると仮定します。

 つまり、上のグラフで言えば、正答率の伸びの低い能力値0(偏差値50に相当;平均的な能力)以下の人や、あるいは逆に能力値が3(偏差値80に相当;かなり突出した能力)を超える人に正答率の不確実性はほとんどないのですが、正答率の伸びの大きい、能力値1から2(偏差値60から70に相当)の人の正答率は不確実性が大きく、一回一回の正答率が大きく変動すると仮定します。

 

<模擬試験及び適性検査における問題A、Bの割合>

 長女が受検した際に受けた模擬試験や本番の検査、千葉県の過去問等から、

模擬試験    :問題A 8割、問題B 2割

本番の適性検査 :問題A 2割、問題B 8割

と仮定します。

 

<適性検査における合否判定に関する仮定>

 適性検査における合格者数は定員80名に、繰上げ合格の推定人数40名(ゆず母さんの推定を参考にしました。繰上げ合格人数に関してはゆず母さんによる直営校合格者人数に関する実地調査の結果を勘案すると多少のブレがあるかもしれませんが、

直営校行脚 - white board

とりあえず40名と置いています)を加えて120名、受検者全体の上位12%と仮定します。

 

<シミュレーションの目的>

 上記のような仮定の下で、さらに細かな調整(「パラメータのカリブレーション」などと言います)なども行って模試偏差値別の合格率をシミュレートし、適性検査模試受験者の偏差値別合格率に見られる、

 

・模試偏差値70以上はかなり高い合格率になる

・模試偏差値60から70未満については、合格率は偏差値によらず50%近辺となっていて偏差値と合格率の間に有意な関係性が見られない(無相関)

 

という特徴が再現できるかどうか?つまり、

「上記のような仮定に基づくモデルはおおよそ正しいのかどうか?」を確かめること。

また、特徴を再現するために行った細かなパラメータの値などから、

「無相関性を生み出すメカニズムのうち、最も重要なものはなにか?」を知ることが今回のシミュレーションの目的です。

 

【シミュレーションの結果】

<シミュレーションの概要>

シミュレーションの概要は以下の通りです。

1)1,000人の受検者を想定し、各受検者に能力値を割り当てる。

2)能力値と問題A、Bの正答率に関する仮定、正答率の不確実性に関する仮定、適正検査模試における問題A、Bの比率に関する仮定に基づき、1,000人の受検者の模試偏差値をシミュレートし、決定する。

3)能力値と問題A、Bの正答率に関する仮定、正答率の不確実性に関する仮定、適正検査における問題A、Bの比率に関する仮定、本番適性検査における合否判定に関する仮定に基づき、1,000人の受検者の合否を判定する。

4)上記3)で得られた合否情報と、2)で得られた模試偏差値情報を用いて、模試偏差値ランク(模試偏差値60-65等模試偏差値を5刻みでランク分け)別の合格率を計算。

 

<シミュレーション結果>

 長女が受検した際、公中検模試が提供する模試偏差値ランク別の合格率は、たった1回の受検結果(サンプル数=1)に基づくものでした。めでたく三期生を迎えた現在でもサンプル数はようやく3になったにすぎません。

 そこで、まずは上で述べたシミュレーションを3回繰り返した場合の模試偏差値ランク別の合格率の散らばりかたを、ボックス・プロットで示すと以下のようになります。

https://moro241.files.wordpress.com/2018/07/simu.pdf

 ボックス・プロットとは変数の散らばり具合を、度数分布よりもより要約された記号として書き表したものです。より深くご存知になりたい方は、以下リンクをご参照ください。

箱ひげ図 - Wikipedia

 ボックス・プロットの横軸は問題Aが8割を占める適性検査模試を受けた際に得られる模試偏差値の区分であり、縦軸は当該区分に属する人たちの適性検査合格率を表します(例えば同区分"60"のところに示されているボックス・プロットは模試偏差値55〜60に位置する受検者の適性検査合格率の散らばりを表します)。

 ボックス・プロット内にある"+"印は当該模試偏差値区分に属する受検者の適性検査合格率(あくまでシミュレーションベースでの合格率ですが)の平均値です。

 この平均値を読み取ってみますと

 模試偏差値55〜60 :26%

 模試偏差値60〜65 :47%

 模試偏差値65〜70 :48%

 模試偏差値70〜75 :64%

 模試偏差値75〜80 :90%

と、偏差値60〜70の区分で模試偏差値と合格率の無相関性が再現されていることがわかります。

 また、シミュレートされた適性検査における正答率の散らばりは以下の通りです。

https://moro241.files.wordpress.com/2018/07/dist.pdf

 若干、ボーダーラインが下の方へ寄ってしまっており、また80点台にある高得点組の分布の塊についてはやや高得点に寄りすぎていると考えますが、100点満点換算で「平均点20点台、ボーダーライン50点前後」と言われている適性検査の得点の散らばりをうまく表現しており、私が持っていたイメージをうまく再現できていると考えます。

 度数分布から視覚的に読み取れるように、千葉県の適性検査は「解ける人、解けない人」がはっきりしており、少なくとも「解ける人」を、たった1,2問の問題のミスで「落としてしまう」という、検査をする側にとっての不幸が起きにくい検査だと言うことができます。つまり、ボーダーライン近辺に受検者が密集していないため、得点が数点動いても大した順位の変動が起きません。

 このことは、仮に千葉県の適性検査が模試のような内容(問題Aが8割、問題Bが2割)だった場合に、先ほどの正答率の散らばりがどうなるかを示す、以下のグラフを見るとその違いがよくわかります。

https://moro241.files.wordpress.com/2018/07/dist2.pdf

 また逆に、適正検査の場合は、偏差値60〜70というボリュームゾーンにおける努力の差がはっきり表れないというデメリットがありますが、このゾーンに関して言えば、適性検査が重視していると考えられる問題Bの正答率が大きく変動する「成長過程にいるゾーン」(前掲のグラフ「能力値別正答率と正答率の伸び」をご参照ください)であり、例えば検査時期があと1ヶ月先であったら順位がどう入れ替わっているかわからないゾーンですので、検査を行う側としては、「ちょっとしたミスが勝敗を分けるような精緻な計測を行うよりも、幅広に受検者を集め、合格者の適性・能力の分散化を図る」ことを重視しているのかもしれません。

 

<一発勝負では発揮されない"真の力">

 構造変化のない、同じメカニズムから生み出される変数の平均値は、サンプル数を多くとればとるほど、その背後にある"真の値"に近づいて行きます。

 模試偏差値区分と適性検査合格確率について、先ほどは少ない試行回数のもとでのシミュレーション結果をお見せしましたが、例えば試行回数を10,000回に増やすとどうなるでしょうか?

https://moro241.files.wordpress.com/2018/07/simu2.pdf

 試行回数を増やすと上のボックス・プロットの通り、模試偏差値区分と合格率は右肩上がりの関係となり、無相関性は観測されません。ちなみに合格率の平均値は

 模試偏差値55〜60 :27%

 模試偏差値60〜65 :46%

 模試偏差値65〜70 :55%

 模試偏差値70〜75 :64%

 模試偏差値75〜80 :94%

となっています。

つまり、「千葉県の適性検査はそれなりに解く力を持っていても、正答率の不確実性がとりわけ模試偏差値60〜70程度の力を持つ階層において大きいために、一発勝負の試験では模試偏差値60〜70程度の力の差は、正答率の不確実性に対して十分大きいとは言えず、結果的に合格率の差に現れてこない。」と結論づけることができそうです。

 

以上、様々な仮定の上に立ったモデルを用いて千葉県適性検査の特徴について考察を行ってみました。この「モデル」というものは非常に便利で、いろいろな考察を導いてくれますので、次回もこのモデルを用いた考察を行ってみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

読解力って何? ー新井紀子氏の著作を読むー

先日、自宅近くの書店の一角にAI関連本のコーナーが設けられており、新井紀子氏の「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」が平積みにされていました。

 

 以前、ゆず母さんのブログでも触れられていた内容ですが、改めて本書を読んでみると、「東ロボくん」を通じたAI研究の知見が「学力とはなんなのか?」という問いの本質に迫る視点をいくつも提供してくれていることに気付かされます。

whiteboard16.hateblo.jp

 

東葛中受検とは何か?」という問いに向かい合う時、表面的には適性検査問題の出題形式の特異性や平均点の低さ、受検生の得点分布の特異性、記述問題における採点基準の厳しさに目が向けられがちですが、結局のところ、「東葛中が求める学力とは何か?」という点に帰着せざるを得ないように思います。

 

ゆず母さんも言及されていましたが、日本人のそれが低下しているとして新井氏が警鐘を鳴らす「読解力」は適性検査を通じて東葛中が受検者に求めている「適性」と深く結びついているように思えてなりません。

 

しばらくこの、新井氏の著作を引用しつつ考えて行きたいと思います。

 

【大学生数学基本調査の結果と適性検査得点分布の類似性】

 まずは新井氏に基礎的読解力調査に対する強い動機付けをもたらした「大学生数学基本調査」に関して、新井氏が著作の中で例示した「偶数・奇数問題」を用いて説明します。

 

新井氏が例示したのは、偶数と奇数を足すと答えがどうなるか、選択肢から選択させた上で、その理由について説明させるものです。

この数学基本調査は48大学、90クラス、6000人の大学生(多くが1年生)に対して行われました。問題例から分かる通り「数学基本調査」と言いつつもかなり基本的な内容を中心とする調査です。

しかし、その結果は新井氏を非常に驚かせるものでした。

例えば、「偶数・奇数問題」の正答率は全体で34%、理系学生に限っても46.4%と半数に満たなかったようです。

問題前半の、「答えがどうなるか?」は良いとして、その後の「理由の説明」の部分ができないようです。

 

私にとって興味深かったのは、「偶数・奇数問題」の大学分類別正答率と、本ブログの記事「適性検査について」で言及させていただいた、東葛中学の、模試偏差値別合格率実績の奇妙な類似でした。

 

著書にはこの問題に関する大学分類別の正答率がグラフで示されています。

大学分類はベネッセの分野分類、偏差値クラスに基づいて分類されており、国立S,A,B、私立S,A,B,C、の合計7つに分類されます。

 

この大学分類別の正答率を見ると、国立Sは「正答+準正答」が約8割で「典型的な誤答」が約2割なのに対して、それ以外の大学分類では、「典型的な誤答」がどれも5割程度でその割合と大学分類の間に有意な差が見られません。

 

「適性検査について」では、適性検査模試受験者の偏差値別合格率について、

 

・模試偏差値70以上はかなり高い合格率になる

・偏差値60から70未満については、合格率は偏差値によらず50%近辺となっていて偏差値の間に有意な相関関係が見られない

 

という特徴を述べました(合格率の傾向を分ける偏差値の閾値についてはだいぶ記憶が曖昧です)。

 

上記事実の説明として当時私が立てた仮説は、

 

「千葉県の適性検査問題が非常に難しいにもかかわらず、模試の問題が易しい、あるいは質的に本番の検査問題と乖離してしまっているために、その模試で計測される偏差値がモノサシとして上手く機能していない。」

 

というものでしたが、この大学生数学基本調査や、それに続く基礎的読解力調査に関する新井氏の考察を吟味して行くことでもう少し良い解釈にたどり着けそうです。

 

【新井氏の仮説と基礎的読解力調査】 

新井氏は、この大学分類別正答率の分布を見て「こんな問題であからさまな差がつく」と驚き、数学基本調査の答案を採点するうちに、「どこの大学に入学できるかは、学習量でも知識でも運でもない、論理的な読解と推論の力なのではないか?」との考えに至り、その仮説に説得力を与えるため、「東ロボくん」研究を通じたAI研究の知見を活用して基礎的読解力調査を開発し、調査を行います。

 

基礎的読解力調査の調査対象は、谷崎潤一郎川端康成の小説や小林秀雄の評論文の行間を読むような特別な能力ではなく、「辞書にあるとおり、文章の意味内容を理解するという、ごく当たり前の意味での読解力」です。

 

しかし、その当たり前の能力をわざわざ調査するその裏側には、「それまで誰も疑問を持っていなかった『誰もが教科書の記述は理解できるはず』という前提」に対する疑問があります。

 

基礎的読解力調査は

係り受け

②照応

③同義文判定

④推論

⑤イメージ同定

⑥具体的同定(辞書・数学)

の6つの分野で構成されており、新井氏によると、

①、②は盛んに研究が進んでおり、AIの正答率がかなり上がりつつある分野、③はAIにはまだまだ難しいとされる分野、④から⑥はAIには全く歯がたたない分野。

とのことです。

 

この基礎的読解力調査は小中高生を中心にしてこれまで2万5000人に対して調査が行われており、調査は規模を拡大しながら今も継続しています。

 

新井氏は豊富なデータの分析に基づく知見を交えながら幾つもの具体例を交えて説明を行って行くわけですが、先に述べた「適性検査合格率と模試偏差値の関係」という問題意識との関連では以下の具体例に興味を惹かれました。

 

係り受け問題とイメージ同定問題に見られる能力値別正答率の特徴】

事前にはわかりませんが、テストの結果が出ると、各問題の正答率(事後的な難易度)の分布がわかり、どの程度の難易度の問題をどれだけ正答できたのかといった情報を用いて、テスト受験者各々の能力を段階評価することが可能になります。

 

新井氏は各種問題に関してこの「能力値」別の正答率を計算し、問題設計の適正性を計ったり、受験者の思考の癖を分析するために利用を行いました。

 

先に、基礎的読解力調査の問題パターンを挙げましたが、その中でも現在のAIでは全く歯が立たないものの1つが「イメージ同定」です。イメージ同定には「文章の正確な理解力に加え、図やグラフの意味を読み取る能力」が必要とされます。

 

私が興味深く感じたのは、「係り受け」のようなAIがすでに得意としつつある問題と、この「イメージ同定」のようにAIでは歯の立たない問題における能力値別正答率や、学年別正答率の違いです。

 

係り受け」の問題では、6段階の能力値と正答率の関係が右肩上がりの綺麗な直線を描いていますが、「イメージ同定」では異なった関係がみられます。

 

「イメージ同定」では、能力値1から3がほぼ横ばいとなり、能力値3から4にかけて直線が右肩上がりに傾斜し始め、能力値4を超える領域では直線の傾きが急激に大きくなるのです。

 

すなわち、「イメージ同定」では、「能力値が一定水準(閾値)を超えると正答率が大きく上がる一方、当該閾値未満の能力値においては大して違いがみられない」のです。先に述べた偶数・奇数問題同様、適性検査試験における模試偏差値と合格率の関係に非常に良く似ていると言えます。

 

「適性検査試験における模試偏差値と合格率の関係」を読み解くためのヒントが隠されていると言えるのではないのでしょうか?

 

次回はこの点についてもう少し掘り下げて行きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エッセイ・ポートフォリオについて

長女が受検を行った際、後から振り返って「やっておけばよかった」と考えたのがこの、「エッセイ・ポートフォリオ」という試みでした。

 

機関投資家や運用会社による運用の現場では、彼ら投資家が保有するポートフォリオ(保有する株式や債券等の集まり)全体の、様々な市場変動要因(株価の下落、物価・金利の上昇、対ドル為替レートの上昇等)に対する感応度を用いてポートフォリオの変動特性やリスク量をチェックするようです。

 

お子さんご自身を「ポートフォリオ」に見立てると、与えられたテーマに沿って書かれた作文や、適性検査に典型的な、異なる二つの意見について自身の経験を交えて自身の考えを述べる事が求められる記述試験への解答はまさに「様々な市場要因に対する感応度」に該当するように思います。

 

「自分のことは自分が良く知っている」と言いますが、実際には、自分を理解するのはとても難しい事です。

 

時間の経過やその日の気分によっても変わりますし、日常的・具体的な問いに対してある程度明確に答えられても、「そのような答えを発する自分そのものは何者か?」と問われると、答えに窮してしまう方は多いのではないのでしょうか?

 

公立中高一貫校受検は、とりわけ「自分と向き合い、考えること」が要求される場面が多いように感じます。東葛中の場合には志願理由書の提出やグループ面接での発言が求められますし、筆記試験でも「どこかでインプットした知識を披露して終わり」とは異なる形で記述問題が出題されます。

 

そしてこれは、公立中高一貫校受検の良い面でもあるのではないでしょうか?

 

私は自身の私立中学受験経験のいびつさ、つまり、「普段の生活から湧いて出る問題意識や興味から乖離した、そのくせ同い年の普通の子は学ばないような瑣末な知識を、『偏差値の高い学校に入る』という目標のためだけに詰め込んで行くことのいびつさ」を大人になってようやく自覚しました。

 

そのような受験経験の中で自分を見つめ直す、ましてや自分が今やっていることの意味を見つめ直すことなどなかったように思います。

 

それはその方が効率が良いし、もともと「日常の感覚から乖離した仮想現実空間でのゲーム」という感覚が強いので、そこに意味を求めるなんて発想が起こりえないわけです。

 

おそらく「ドラゴンクエスト」の世界観に意味を問いながらゲームを続ける人がいないのと同じなのだと思います。

 

一方で、適性検査の方は、いちいち自分の経験を踏まえつつ2つの異なる考え方に対して自分の見解を論じなければなりませんし、「工程録 その4」で引き合いに出したように、日本の林業について暗記していた知識を記述するのでは飽き足らず、林業をより良くするための意見を書かされます。

 

さらに、実際には筆記試験の出来で合否がほとんど決まってしまうはずなのに、2次検査までに志願理由書なんてものを出さないといけないし、適当に片付けようと思ったら、塾の先生からしつこく何度も書き直しを迫られるわけです。

 

つまり、適性検査対応を通じて自身への問い、即ち「様々な市場変動」がぶつけられ、その問いに対する自身の答え、即ち「市場変動への感応度」を確認する事が出来るのです。

 

これらを集めていけば、立派な「ポートフォリオ診断書」が出来上がるのではないでしょうか?そしてそれは適性検査2次検査の筆記問題や志願理由書の作成、グループ面接にも役立つのではないでしょうか?

 

長女の際には時間が無くてできませんでしたが、小学5年生で作文教室を始めたあたりからこのエッセイ・ポートフォリオを作っていく作業を意識されると、2年間で得られるものは大きいのではないかと考えます。

 

そしてそれはそのままお子さんの「受検奮闘記」にもなるのではないでしょうか?

 

最後に、「様々な問いに対する自分自身の答えを確認していく事で自分を知る、あるいは自分を確立して行く」という視点で書かれた興味深いワークブックを紹介します。

 

「読書を通じた長女とのコミュニケーション」でご紹介した藤原和博氏が中学校で実践されていた「200字意見文トレーニング」です。

 

https://www.google.co.jp/amp/s/gamp.ameblo.jp/wakaba-sakubun/entry-11573282057.html

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り返り「長女との対話」編 その4

【本を通じた長女との対話】

長女も小学生高学年になってくるとなかなか親と会話を持たなくなってきます。

 

適性検査の勉強を見てやる時間はその意味で長女との対話を行う貴重な機会でした。学校や塾での出来事はなかなか話をしてくれない長女も、適性検査の過去問や対策問題については自分の考えをぶつけてくれます。

 

その意味で適性検査対策は長女とのコミュニケーション形成にとても貢献してくれたのですが、もう一つ、コミュニケーションを取るために試していたことがありました。

 

それが、「本を通じた長女との対話」でした。簡単に言ってしまえば、

 

書店で見つけたり、知人に勧められて読んでみて面白かった本を何気なく長女にも読ませ、簡単な感想を交わす。

 

というものでした。

 

【見え見えな手段で哀れみを誘う】

「何気なく長女にも読ませ」というところがなかなか難しいのですが、私は「長女が勉強に使う居間のテーブルに無造作に置いておく」という手段をよく使いました。

 

ハッキリ言って「見え見え」なのですが、それでも長女に「読んでみなさい」というよりはきっとはるかにマシなのです。

「お父さんまた見え見えなことしてる」という哀れみの感情に加えて、本の装丁やタイトルから少しでも興味を感じてくれれば、かなりな確率で手にとってもらえます。

 

そして読み終わった頃合いに、「登場人物の中で誰が一番好き?」とか、「あの場面のあの人の行動ってどう思う?」とか、一言二言で答えられるような感想を聞くだけでも、なんとなく長女のモノの考え方、感じ方が伝わってきますし、本人に他人にぶつけてみたい考え方が湧いていればポツポツと話してくれます。

 

でもそれも、「お父さんも読んだんだ、仲間だね。」という気持ちがないとダメなので、親御さんご自身も読んでいらっしゃることが大前提です。

 

以下は、こんな形で長女との会話に使った本を、簡単なコメントを添えて紹介します。

 

藤原和博

・はじめて哲学する本

リクルートメディアファクトリーといった「クリエイティブ系」ビジネスの最前線で経験を積み、杉並区の中学校の校長に就任した著者による「哲学する本」です。

哲学というのはカントやシュレディンガーのこ難しい本を読んで難しい言葉を操ることではなくて、身近にある「何故?」に一歩深く踏み込んでみることなんだ、ということがわかる本です。

小学5年生の頃に紹介したところ長女はえらく気に入り、同時にこれまでよりちょっと扱いにくい子にもなりました。

担任の先生にはなんでもハイハイと言うことを聞く良い子から、「なぜ先生はこういう事を言うのか?」を考えるちょっと嫌な子になったかもしれません。

 

三浦しをん

・風が強く吹いている

とにかく楽しめる、一級のエンターテイメント作品です。タスキをつなぐ個性あふれる10人のメンバーの中で「誰が好き?」と聞いてみてください。その答えにきっと、「ほほー」と頷かざるを得ません。

 

佐藤多佳子

サマータイム

・黄色い目の魚

・一瞬の風になれ

性的描写などもあって若干読ませるのをためらいましたが、長女は割とその手のものも堂々と受け止めてしまうので、読ませてしまいました。その辺はお子さんによって受け止め方が違うので、お子さんに読ませる前に親御さん自身、実際に読んで確認する必要はあると思います。

長女は絵を描くのが好きなのですが、「黄色い目の魚」にはその辺りの描写などもあって気に入ったようです。

「一瞬の風になれ」は3冊ものの結構な長編でしたが、一気に読み上げていました。

 

市川朔久子

・夜の美容院

・ABC!曙第二中学校放送部

・小やぎのかんむり

この作家の作品に登場するのは皆、親や同級生の仲間の何気ない一言に深く傷つけられ、その瞬間から何かを失ってしまった女の子です。

受検への親の手助けは逆に言えば親の期待感の投げかけでもあります。

長女は物語の中で言葉を失ってしまったり、体が発するSOSを無意識に受け止めきれなくなる女の子に深く共感したようで、「この作家が描く女の子が好き」と言っていました。

 

上橋菜穂子

・鹿の王 シリーズ

獣の奏者 シリーズ

・守り人 シリーズ

こちらは長女が中学生に上がってから見つけたのですが、小学生にも大人にも楽しめるファンタジーとして世界中を見渡しても引けを取らない作品群だと思いますので紹介します。

著者は文化人類学者であり、また医学にも造詣が深く、物語の世界観の描写が非常に巧みです。これは間違いなくオススメです。是非一度お手にとってご覧ください。

 

度々の先送りで恐縮ですが、今回はここまでとします。次回は「エッセイ・ポートフォリオ」について述べさせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

振り返り「長女との対話」編 その3

【国語力は全ての基本】

東葛中受検に取り組まれる小学5〜6年生のお子様にとって最も基礎的な学力は何かと問われれば、それはやはり国語力だと考えます。

 

千葉県立中の適性検査で出題される理系総合問題は非常に難しく、お子さんたちはそんな問題をスラスラ解ける「地アタマの良さ」のようなものに憧れがちですが、国語力がその「地アタマ」を養う上で非常に重要な役割を果たしていることは間違いありません。

 

【国語は論理力を鍛える】

「論理力が問われる教科」といえば数学を思い浮かべる方が多いと思いますが、私たちが論理を扱うツールとしてまず最初に手にするものはやはり言語であり、特定の目的(伝えたいこと)に沿ってそれらを組み合わせ、並べ換える文章なのではないでしょうか?

 

【裁判官の論理力】

論理力というものについて考えさせられるエピソードとして特許関係の仕事に携わっている知人から聞いたお話を紹介します。

 

その知人は仕事柄特許を巡って裁判所(知財高裁)で争うことをよくするのですが、いつも、必ずしも係争案件の技術的専門家ではないはずの裁判官が専門家の目から見ても妥当な判決を下すことに驚くそうです。

 

もちろん、知財高裁にはこの手の分野に精通した調査官がいて、裁判官も知財係争関連に詳しい方なのだろうとは思いますがすごいことです。

 

典型的な技術屋で、ゼネラリストというものを普段あまり信用していない知人も、「やはり裁判官にもなる人は優秀なんだなあ」と漏らしておりました。

 

裁判官になる人には若い頃猛勉強が過ぎて車の免許を取り損ね、運転できない人もいると聞きます。それだけ労力をかけて積み上げているものは単なる法律や判例の知識ではなく、それらコトバの訓練によって鍛え上げられた論理力であり、判断力なのでしょう。

 

【本を読む習慣とエッセイポートフォリオ

前置きが長くなりましたが、今回はこの「国語力」に深く関わる、

・本を読む習慣

・エッセイポートフォリオ

について書いてみたいと思います。

 

ポートフォリオ」というのは普段あまり聞きなれない言葉ですが、元々は書類を入れておく紙ばさみや折かばんを意味するもので、その中に投資家・銀行家であれば有価証券、画家・芸術家であれば自分の作品を持ち歩くことから、「財産目録」、「作品集」などと訳されます。

エッセイポートフォリオとはまさに自分がこれまで書いてきたエッセイ集のことです。

現在、大学入試改革の一環として高校での学びをデータベース化するJapan e-portfolioなるものが始動しているようですが、これはまさに高校生活における学びの「財産目録」ないしは「作品集」、すなわちポートフォリオです。

つまり、適性検査対策として積み上げてきた作文をポートフォリオとして管理し、読み解くことでお子さん自身が自分を理解する一助になるし、適性検査二次試験対策にもなるのではないか?という思いつきなわけです...

https://jep.jp/statics/about.html

 

【本を読む習慣と長女との対話】

長女の読書好きを促したきっかけとして、斎藤惇夫氏の「冒険者たち」との出会いがあります。

 

ブログをお読みの方には小学生の頃、テレビ東京の再放送で夕方に放映されていた、どぶネズミ「ガンバの冒険」というアニメをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。「冒険者たち」はそのアニメの原作であり、「グリックの冒険」、「ガンバとカワウソの冒険」に並ぶ斎藤惇夫氏三部作の一つです。

 

長女には4つ下の弟がいるのですが、長女が小学三年生のころ、幼稚園児の弟に絵本の読み聞かせをする母親の姿をみて赤ちゃん返りする時期がありました。

そこで寝る前に自分が中学生のころに愛読していた「冒険者たち」の読み聞かせをするようになったのです。

冒険者たち」には力持ちのヨイショ、知恵者のガクシャ、足の速いイダテンを始め、イカサマ、バレット、バス、テノール、アナホリ...と個性あふれる15匹の仲間たちが登場します。

これら15匹の仲間たちをやや大げさに声色を変えて読み聞かせをしたところ長女は面白がり、この物語をとても気に入りました。

会社の都合で帰りが遅くなり読み聞かせができない日があると、長女は自分で物語を読むようになったのです。

冒険者たち」の読み聞かせが終わると長女は「グリックの冒険」や「ガンバとカワウソの冒険」を自分で読むようになりました。どちらも300ページはあるとても読み応えのある長編なのですが、長女はこれをいつのまにか読了してしまったのです。

自分が読み終えた分厚い本をみて長女は自信をつけたようで、その後貪るように本を読むようになりました。

 

と言っても、長女は別に「勉強」という感覚で本を読んでいたわけでなく、文章に書かれたお話を想像しながら物語を読み進んでいくのが純粋に楽しかったようです。

 

こんにち少し大きな書店の児童書コーナーに行くと、実に様々な児童書が溢れていることに驚かされます。そんな児童書の中から自分の好きな本を器用に探してきては、そのシリーズ、作家の本を読み漁っていくわけです。

 

【おススメ本のリスト】

以降、小学校六年生までに長女が見つけ出してきて読んだ主なものを簡単なコメント付きで紹介します。

 

斎藤惇夫

グリックの冒険

冒険者たち

ガンバとカワウソの冒険

寡作なこの作家は上記を含めて5冊しか作品を発表していないと聞きますが、上記3冊は薮内正幸氏のイラストと共に広く知れ渡った、児童文学の金字塔と言えます。

 

はやみねかおる

・都会のトム・ソーヤー シリーズ

・名探偵夢水清志郎事件ノート シリーズ

・名探偵夢水清志郎の事件簿 シリーズ

・怪盗クイーン シリーズ

・虹北恭助 シリーズ

そして誰もいなくなったアガサ・クリスティ

著者のはやみねかおる氏は教育学部数学科を出た小学校教師としての経歴を持つ人で、「読書嫌いな子も思わず読みたくなるような面白い本を自分で書いてみよう」という動機で作家への道を踏み出しました。

長女はこの作家が大好きで、著作はもちろん、ネットで集めたのか、作家に関する色々なエピソードまで良く知っています。

おそらく「性格が合う」といったレベルで相性が良いのでしょう。

そんな作家と出会えれば、読書も進みますね。

 

あさのあつこ

・No.6 シリーズ

・ミヤマ物語 

The MANZAI

あさのあつこといえば「バッテリー」シリーズですが、長女はNo.6、ミヤマ物語、といった著者の社会派としての一面が色濃く出た作品から入って行きました。時期もちょうど5年生に差し掛かる頃で、この辺りから読書の傾向も変わってきます。

 

宮部みゆき

・ステップファーザー・ステップ

パーフェクトブルー

・心とろかすような マサの事件簿

宮部みゆきの初期作品群(「火車」〜「理由」までの時期)は私と妻も好きで本棚に置いてありますが、長女が手を出せるのはまだ上記のような軽いタッチの作品までのようです。

 

恩田陸

・6番目の小夜子

夜のピクニック

・常野物語 シリーズ

・ミツバチと遠雷

直木賞を受賞した「ミツバチと遠雷」は正確には小学校を卒業後の春休みに読みました。ページ数も多く、この時期に読むにしてはチャレンジングな本ですが、こういった本も読めるようになったようです。

 

以上の本は、お子さんが本と向き合うきっかけを作るのにうってつけの、面白いストーリーばかりです。

 

話が大分長くなってしまいましたので、「本を通じた長女との対話」、「エッセイポートフォリオ」については次回のお題とさせていただきます。