行程録 その4

これまで、理系総合科目を中心とした一次検査対策を中心にご紹介して来ましたが、ここでは文系総合科目の一次検査対策についてご紹介します。

 

【文系総合科目対策の概要】

文系総合科目では新聞やニュースで目にする時事問題や、学校で直面するような課題解決、普段の生活で触れる事柄(スーパーのチラシや生鮮食品の産地etc.)を入り口とした経済・社会に関する問題が出題されます。

 

文系総合科目については、①長女自身が得意にしていたこと、②塾でかなり手厚くご指導していただいたこと、からほとんど塾任せで、夏休みの間は塾でやった内容の復習(解き直し)がほとんどでした。

 

長女の通っていた塾では二年連続東葛中の合格者実績で首位に立っていますが、その実績を支えているのが、この文系科目の指導にあると考えています。

 

適性検査における理系総合科目の難しさや、一般の私立中学入試問題にはみられない出題形式から、公立一貫校受検のカギを握るのは理系総合科目と思われがちですが、より確実に実力の底上げができるという意味において、文系総合科目は非常に重要だと思います。

 

【文系総合科目検査問題の素晴らしさ】

公立一貫校単願にするか、私立との併願にするか迷った際に私の頭をよぎったのは自身の私立中学受験の経験でした。

 

私はもともと本を読んだり、新聞で世の中のことに興味を持ったりというよりは、サッカー選手に憧れたりする普通の小学生男子でしたが、友達に誘われて春期講習を受けたことをきっかけに気がつくと中学受験競争の真っ只中にいました。

 

そんなわけですから、日本史に出てくる年号や藤原氏の系図、都道府県別の特産品や議会の意思決定ルール、日本の省庁とその役割など変な知識はやたらありましたし、国語の読解問題では山本有三志賀直哉武者小路実篤あたりから川端康成などを読まされていました。

 

しかし今から振り返ってみると、自分の住んでいる地域に残る史跡にロマンを感じるわけでもなく、新聞を読んで世の中の流れに想いを馳せるわけでもなく、自分が通う学校や自治体の活動を誰が担い、どのように行われていくのか興味が湧いたり、イメージを持っていたりするわけでもなく、ましてや日本の代表的な文学作品を好んで読むわけでもありませんでした。

 

このような、知識と動機、目的のギャップ。つまり、その知識を活用することで何かしたいことがあるわけでもなんでもないのだけれど、とりあえず偏差値の高い学校に行くために同年代の他の子がほとんど触れないような知識を詰め込んで行く...

 

 そんなギャップが、大人になってから振り返ってみると非常にアンバランスなものに思えたのです。

 

そのような思いがあったために、長女のケースでは私立中学との併願を選択しませんでした。

 

それでは、適性検査やそのための勉強はどうでしょうか?確かに検査を勝ち抜くための訓練は必要であり、長女の夏休みはそのための訓練に一日10時間以上、明け暮れる毎日でした。

 

但し、そこに無駄な詰め込みや無意味な先取り学習のようなものはほとんど無かったと考えています。実際、特に千葉県の適性検査問題はよく練られた、素晴らしい検査だと思います。

 

特に私立中学受験の文系科目につまらない印象を抱いていた私にとって、適性検査文系総合科目はとりわけ素晴らしく感じます。

 

百聞は一見にしかず。まずは2017年度の問題を実際に見てみましょう

 

http://keiyo-gakusha.net/ad/wp-content/uploads/2017/05/chibaH29-1-1.pdf

 

まず問題1ですが、これは単純に読み物として読んでもとても面白く感じます。図表がふんだんに登場し、簡単な割合の計算などをしつつこれらを活用することでより興味深い発見が出来ることがわかります。

 

昔、千葉県がお茶の産地として有名であったことはこの問題で初めて知りましたし、千葉エコ農産物など、この問題を解いた後ではスーパーの生鮮食品コーナーの見方も違ってくるのではないでしょうか?

 

問題2にざっと目を通した後で、以下リンクをご覧になってください。

 

http://blog.goo.ne.jp/kimono08/e/51d104736c38b77956dca282ef274971

 

上記は2006年の東大前期試験で出題された地理の問題です。

 

適性検査の問題2-(4)、2-(5)は東大前期試験とそっくりで、どちらも

 

1) 1960年ごろ、日本の人工林において、植樹が盛んに行われたこと。

2) その後、木材の供給は自由化による安価な輸入材におされ、植樹、伐採の双方が減少して行き、現在では樹齢60年前後の樹の樹齢別人工林面積構成に占める割合が増えていること(まるで日本人人口における年齢構成のように)。

 

が解答のポイントとなります。

 

東大前期試験では、樹齢別人工林面積のグラフの推移と、木材供給量に占める国内産木材と海外産木材の推移と、「輸入自由化、木材価格」というキーワードで解答への誘導を行なっていますが、「輸入自由化、木材価格」というキーワード指定での誘導はいかにもやっつけな感じがしますし、樹齢別人工林の推移のグラフについても、そこから沢山の情報を引き出せるという意味では納得感がありますが、なんとも味気ない感じです。

 

基本的には、日本の林業の概観について知識を持っている人が、グラフとキーワード指定を受けて、「ああ、このテーマについて書けばいいのね!」と解答する、形を変えた暗記問題になっています。

 

一方で、適性検査では、植林面積の推移、国産木材と海外産木材の割合推移、国内での木材生産と森林からの伐採量の相関、という、解答に必要な材料を提示し、問2-(4)で考え方の訓練をさせた上で、面積と容積(森林蓄積量)のギャップから、60年前に植林された樹々が伐採されずに成長し、大樹に育つ様を想像させることで解答へと導いています。

 

上記を想像された時、私はハタと膝を打ちました。解答に至る過程がなんともドラマティックではありませんか...

 

さらに素晴らしいのは問題2-(6)です。お子さんは別に知識をひけらかすために勉強するのではなく、前向きなソリューションを考えるために勉強するのだと思います。

 

次回では、二次適性検査で初めて登場する国語についてお話をさせていただきます。