行程録 その4
これまで、理系総合科目を中心とした一次検査対策を中心にご紹介して来ましたが、ここでは文系総合科目の一次検査対策についてご紹介します。
【文系総合科目対策の概要】
文系総合科目では新聞やニュースで目にする時事問題や、学校で直面するような課題解決、普段の生活で触れる事柄(スーパーのチラシや生鮮食品の産地etc.)を入り口とした経済・社会に関する問題が出題されます。
文系総合科目については、①長女自身が得意にしていたこと、②塾でかなり手厚くご指導していただいたこと、からほとんど塾任せで、夏休みの間は塾でやった内容の復習(解き直し)がほとんどでした。
長女の通っていた塾では二年連続東葛中の合格者実績で首位に立っていますが、その実績を支えているのが、この文系科目の指導にあると考えています。
適性検査における理系総合科目の難しさや、一般の私立中学入試問題にはみられない出題形式から、公立一貫校受検のカギを握るのは理系総合科目と思われがちですが、より確実に実力の底上げができるという意味において、文系総合科目は非常に重要だと思います。
【文系総合科目検査問題の素晴らしさ】
公立一貫校単願にするか、私立との併願にするか迷った際に私の頭をよぎったのは自身の私立中学受験の経験でした。
私はもともと本を読んだり、新聞で世の中のことに興味を持ったりというよりは、サッカー選手に憧れたりする普通の小学生男子でしたが、友達に誘われて春期講習を受けたことをきっかけに気がつくと中学受験競争の真っ只中にいました。
そんなわけですから、日本史に出てくる年号や藤原氏の系図、都道府県別の特産品や議会の意思決定ルール、日本の省庁とその役割など変な知識はやたらありましたし、国語の読解問題では山本有三、志賀直哉、武者小路実篤あたりから川端康成などを読まされていました。
しかし今から振り返ってみると、自分の住んでいる地域に残る史跡にロマンを感じるわけでもなく、新聞を読んで世の中の流れに想いを馳せるわけでもなく、自分が通う学校や自治体の活動を誰が担い、どのように行われていくのか興味が湧いたり、イメージを持っていたりするわけでもなく、ましてや日本の代表的な文学作品を好んで読むわけでもありませんでした。
このような、知識と動機、目的のギャップ。つまり、その知識を活用することで何かしたいことがあるわけでもなんでもないのだけれど、とりあえず偏差値の高い学校に行くために同年代の他の子がほとんど触れないような知識を詰め込んで行く...
そんなギャップが、大人になってから振り返ってみると非常にアンバランスなものに思えたのです。
そのような思いがあったために、長女のケースでは私立中学との併願を選択しませんでした。
それでは、適性検査やそのための勉強はどうでしょうか?確かに検査を勝ち抜くための訓練は必要であり、長女の夏休みはそのための訓練に一日10時間以上、明け暮れる毎日でした。
但し、そこに無駄な詰め込みや無意味な先取り学習のようなものはほとんど無かったと考えています。実際、特に千葉県の適性検査問題はよく練られた、素晴らしい検査だと思います。
特に私立中学受験の文系科目につまらない印象を抱いていた私にとって、適性検査文系総合科目はとりわけ素晴らしく感じます。
百聞は一見にしかず。まずは2017年度の問題を実際に見てみましょう
http://keiyo-gakusha.net/ad/wp-content/uploads/2017/05/chibaH29-1-1.pdf
まず問題1ですが、これは単純に読み物として読んでもとても面白く感じます。図表がふんだんに登場し、簡単な割合の計算などをしつつこれらを活用することでより興味深い発見が出来ることがわかります。
昔、千葉県がお茶の産地として有名であったことはこの問題で初めて知りましたし、千葉エコ農産物など、この問題を解いた後ではスーパーの生鮮食品コーナーの見方も違ってくるのではないでしょうか?
問題2にざっと目を通した後で、以下リンクをご覧になってください。
http://blog.goo.ne.jp/kimono08/e/51d104736c38b77956dca282ef274971
上記は2006年の東大前期試験で出題された地理の問題です。
適性検査の問題2-(4)、2-(5)は東大前期試験とそっくりで、どちらも
1) 1960年ごろ、日本の人工林において、植樹が盛んに行われたこと。
2) その後、木材の供給は自由化による安価な輸入材におされ、植樹、伐採の双方が減少して行き、現在では樹齢60年前後の樹の樹齢別人工林面積構成に占める割合が増えていること(まるで日本人人口における年齢構成のように)。
が解答のポイントとなります。
東大前期試験では、樹齢別人工林面積のグラフの推移と、木材供給量に占める国内産木材と海外産木材の推移と、「輸入自由化、木材価格」というキーワードで解答への誘導を行なっていますが、「輸入自由化、木材価格」というキーワード指定での誘導はいかにもやっつけな感じがしますし、樹齢別人工林の推移のグラフについても、そこから沢山の情報を引き出せるという意味では納得感がありますが、なんとも味気ない感じです。
基本的には、日本の林業の概観について知識を持っている人が、グラフとキーワード指定を受けて、「ああ、このテーマについて書けばいいのね!」と解答する、形を変えた暗記問題になっています。
一方で、適性検査では、植林面積の推移、国産木材と海外産木材の割合推移、国内での木材生産と森林からの伐採量の相関、という、解答に必要な材料を提示し、問2-(4)で考え方の訓練をさせた上で、面積と容積(森林蓄積量)のギャップから、60年前に植林された樹々が伐採されずに成長し、大樹に育つ様を想像させることで解答へと導いています。
上記を想像された時、私はハタと膝を打ちました。解答に至る過程がなんともドラマティックではありませんか...
さらに素晴らしいのは問題2-(6)です。お子さんは別に知識をひけらかすために勉強するのではなく、前向きなソリューションを考えるために勉強するのだと思います。
次回では、二次適性検査で初めて登場する国語についてお話をさせていただきます。
行程録 その3
ここでは、先にあげた問題集について、その活用方法をご紹介します。
適性検査の過去問から45題を精選した上で、一問一問丁寧に解説してあり、独習に適している(無料ビデオ講座を見ることもできます)他、適性検査過去問演習の初級者にはちょうど良い難易度です。
銀本を使った問題演習の合間の独習用として長女もこの問題集からスタートし、この問題集を解き切って自信をつけてからより難易度の高い問題集へと移っていきました。
以下6つの視点から170題の過去問を精選・分類した問題集。
■条件を整理する
→与えられた情報から、条件や必要なことがらを整理する
■視点を変える
→立場や視点を変えて考えたり、具体化・抽象化して考える
■因果関係をつかむ
→現象やデータの因果関係を類推したり、根拠や理由を言語化する
■調べる・比べる
→資料の関連や特徴を読み取る。共通点や相違点、変化をとらえる
■数を操作する
→ルール従って数を操作し、必要な数値を求める
■自分で造り出す・決定する
→自分の経験や意見をもとに、新たな提案や創作を行う
「45題詳細解説」を解ききる頃には弱点ノートにもある程度問題が溜まってきますので、弱点ノートに溜まりがちな苦手分野を集中的に訓練するために使いました。
先にあげた「45題詳細解説」に比べると難しい問題も増え、解答解説を読んだだけでは分からないケースも出て来ます(「45題詳細解説」に比べると解説もかなりあっさりしています)ので塾の先生や親御さんのサポートが必要になってきますが、この問題集を解きあげると適性検査の問題パターンをほぼ網羅できると思います。
夏休みは銀本とこの問題集が自宅学習の中心になりました。苦手な問題パターンを中心に夏休みに7〜8割を解きました。
長女の苦手な問題の1つが、何らかの合理的な判断で探索領域を限定した上で、その中の全組み合わせをコツコツと調べ上げて行くタイプの問題で、特に「探索領域にあたりをつける」部分を不得意としていました。
場合の数は上記の良い訓練になりますし、図形問題は千葉県の適性検査では頻出分野でしたので、書店で見つけて買い与えました。
解法パターン別に問題が細分化されていますので、苦手な問題、強化したい問題ごとに辞書的に活用しました。
図形問題の強化を考えた際に上記の問題集とどちらが良いか判別がつかずに両方買いましたが、こちらは問題が難しく、結局利用しませんでした。
私立中学受験でならう特殊算等について、辞書的にかなり細分化、網羅されているため、特殊算の知識を活用できる問題に出会った際に辞書的に活用しました。
夏休みを終えた秋口以降、長女の問題解答能力が飛躍的に上がり、この時期には貪るように問題に当たっておりました。それまで問題集の選択に迷って購入したものの本棚に眠っていたものですが、気づけば長女が引っ張り出して解き切っていました。
こちらも同様です。
行程録 その2
【初めは歯が立たない過去問題集】
長女の通っていた塾では、夏休みから全国の適性検査過去問題集(銀本)
を解くことが解禁されます(秋から過去問題演習があるため、千葉中・東葛中を除く)。
長女も解禁と同時に銀本を解き始めましたが、特に理系総合問題(適性検査1-2)に関して最初は全く歯が立たず、塾の自習室から泣いて帰ってきたこともあります。
【初めての過去問、向き合い方】
上記のような状態の中でまず最初に努めたことは、長女に展望を与え、無力感を取り除いてやることでした。
知識の積み重ねや特殊算の解法を一通りマスターすることが成果に直結しにくい適性検査において、お子さんはどうしても「頭の良さ」のようなものを意識しがちです。
そして過去問が解けないと、それは自分の頭が悪いからだと悲観的に捉え、無力感に囚われてしまいます。
そのような時には、以下のような言葉を何度でもお子さんに投げかけてあげてください。
・質(頭の良さ)は閾値を超える量の訓練を経て量が転換したものであること。
・お子さんは今、ようやくその訓練に取り組もうとしているところであり、 現段階で効果が出ないのはむしろ当たり前であること。
・それでもこの夏しっかりと量の訓練をこなし、山を登りきることができれば、秋口には素晴らしい展望が開けること。
閾値を超える量の訓練をできなかった人、する気もなかった人ほど、「天才」、「才能」という言葉を安易に持ち出し、「秀才」という言葉を使って量の訓練に挑むお子さんを暗に馬鹿にしようとします。
そんな言葉は聞くに値しない雑音です。
「努力は必ず報われる。」親御さん自身が強く胸に刻み込んで、お子さんの気持ちを支えてあげてください。
【過去問への取り組みかた】
過去問は最良の適性検査対策の一つであることは疑いがありません。長女は2017年度受検用の銀本を全て解き、間違えた問題は一次検査までに何度も解き直しをしました(この弱点ノートについては後ほど触れます)。
但し銀本には以下のような欠点があります。
・解説がなく、独習に不向きなこと
・全国の適性検査を網羅しているが、解く順番を間違えると、お子さんの自信を必要以上に奪うことになること。
銀本には解答が付いていますが、そこに至る筋道を示す解説がありません。よって間違えた問題で解答を見ても解き方がわからない場合には、そこで時間をかけずに付箋をつけておいてもらい、後日私が弱点ノート(ルーズリーフ)への問題のコピーの貼り付けと長女への解説を行いました。
弱点ノートは長女が間違えた問題を分類しながらそのコピーをルーズリーフホルダーに貯めて行きます。この分類作業を通じて長女の弱点が判り、その後の重点的演習の際の資料にもなりました。
次に銀本を解く順番ですが、大抵の塾では秋口以降、千葉県の過去問を用いた過去問演習を行いますので千葉県の問題は飛ばします。
それから東京都、神奈川県、京都府の問題も、この時期には難しくてお子様の自信を無駄に削いでしまう恐れがあるので後回しにします。
長女は初めて過去問に取り組み始めた際、いきなり東京都の問題から始めてしまったため、歯が立たず、余計に自信を削ぐ結果となってしまいました。
東京都の一貫校は共通問題と各学校の独自問題の組み合わせになりますが、独自問題については学校によってかなり傾向が違ってきます。
これはあくまで個人的な感想ですが、小石川、大泉などはトリッキーな問題や無駄に難しい問題も含まれており、あまりお勧めしません。逆に両国、武蔵などは良問が多いと感じました。また、三鷹は泥臭くコツコツと調べて行く問題が出ることが多いように感じます。
長女は朝起きてからの2時間程度と、塾の自習室に場所を移してからの2時間程度を過去問演習に当てていたようです。
【その他の独習用問題集】
過去問題演習以外の時間では、詳細な解説がついた問題集を用いて独習を行いました。
ここでは、使った問題集をざっとあげ、その具体的な使い方について次回以降補足させていただきます。
行程録
みなさんのご参考になるかどうか分かりませんが、2017年度適性検査に向けた長女の歩みをご紹介します。
【塾選び】
長女は小学四年生の冬期講習で初めて塾通いを経験し、小学五年生から東葛中受験コースに通い始めました。
柏駅近くに校舎を構えるその塾は2年連続で毎年40名近い東葛中合格者を出しており、振り返って考えてみるととても良い環境に身を置くことができたと考えています。
わずか二年間ではありますが、これだけ合格者の数が安定しているということは、潜在的な東葛中合格者のかなりの割合がこの塾のこのコースに集まっているということです。
そのような環境では塾の側も、お子さんの到達度に関する見立ての精度が上がって行きます。またこれはこの塾固有の特徴ではありますが、お子さんの様子をとてもよく観察し、こちらから望めば非常に親身になって相談に乗ってくれます。
【受検までの行程の概観】
まずは受検スケジュールを見渡してみます。昨年のケースですと
12/10 一次検査
12/22 一次検査合否通知
1/16 報告書、志願理由書等提出
1/28 二次検査、面接
2/3 二次検査合否通知
2/6 入学確約書提出期限(16:00)
2/8 繰上げ合格者通知期限
でした。
まず、各項目について簡単に触れてみましょう
1)一次適性検査
国語、社会など文系科目の総合的な適性を見る適性検査1-1、算数、理科など理系科目の総合的な適性を見る適性検査1-2、それぞれ100点満点、合計200点の筆記試験です。
東葛中は毎年10倍以上の倍率がありますが、この段階で受検者が倍率4倍までに絞られます。
2)二次適性検査
算数、理科、社会、身の回りの生活での問題解決などの文系・理系総合での適性を見る適性検査2-1、共通のテーマに対する二つの異なる考え方(そのうちの一つは聞き取り)を要約した上でどちらに妥当性を感じるか自身の考え方を明らかにし、自らの経験も踏まえてその理由を記述する適性検査2-2、それぞれ100点満点、合計200点の筆記試験です。
3)報告書
いわゆる「 内申書」です。
都内の中高一貫校ではそれなりに配点があるようですが、千葉中・東葛中ではほとんど配点がないというのが定説で、あまり重視されていません。
4)志願理由書
東葛中の志望動機や入学後力を入れたい事などを、将来の夢を交えつつA4用紙一枚にまとめて提出します。選考にほとんど影響がないとの見方もあります。選考に影響があるとの考えからか、これをまとめる作業を通じた受検生への副次的な効果を期待してかは分かりませんが、長女の通った塾ではかなり重視しており、長女は何度も書き直しをしました。
5)面接
5人ほどのグループで行い、順番に志望理由をのべた後、2017年度の場合は行ってみたい国とその理由を聞かれたそうです(2016年度は好きな言葉)。志望理由書と同様、選考への影響という点では見方が分かれており、長女の通った塾ではさほど重視されていませんでしたが、別の塾では20点ほど配点があり、ボーダーライン上の順位が入れ替わるくらいの影響度があるとの見方をしていました。
【一次検査と二次検査】
長女が通った塾では12/10まで全力で一次検査に臨む方針をとりました。
二次検査になると、一次検査でそれぞれ100点が与えられていた文系総合問題(適性検査1-1)、理系総合問題(適性検査1-2)がまとめられ、適性検査2-1として100点しか配点されません。
このことは、次の二つの点で高得点を狙うことが困難になることを意味します。
1) 答案作成に時間のかかる記述問題と、捨て問(費用対効果が見込めない問題に早い段階で見切りをつけ、時間ロスを最小限に抑えるテクニック)を適切に行えないと大きな時間ロスにつながる難解な理系問題が混在し、結果的に一次検査よりも時間当たりの問題のボリュームが多くなっている事。
2) 理系問題の問題数が減り、その結果得意な問題に出会えない確率が大きくなる事(50点取ればボーダーラインに手が届く難解な試験において、問題数の多さは得意な問題に出会えない確率を低く抑える機会分散と捉えるべき)。
つまり適性検査2-1は、適性検査1-1、1-2、に比べて得点を伸ばしにくいのです。
それでは、二次検査で残りの100点が与えられる読解・聴き取り・作文の総合問題(適性検査2-2)はどうでしょう?
適性検査2-2は国語の総合問題ということができますが、これは一次検査で出題されないため、この能力・適性だけに優れていても、二次検査にたどり着けるかどうかわかりません。
加えて、以下のような理由でやはり、得点を伸ばしにくい検査だと言えます。
1) 問題のレベルが高い。
過去問題の解答例から、要約問題では文章中からキーセンテンスを抜き出してコピペするだけでは不十分で、より抽象化された適切な言葉への言い換えをできる事が求められているように見受けられます。
また聴き取り問題は県立高校の入試問題でも出題があり、長女も対策の一環で当該過去問を解きましたが、東葛中の聴き取り問題は県立高校のそれに比べても難易度が高く感じました。
2) 採点基準が非常に厳しい。
これは文系総合問題や理系総合問題の記述問題にも当てはまることですが、東葛中の記述問題の採点基準は非常に厳しく、「書けた割に点が取れていない」ケースが非常に多く見受けられます。
昨年度まで公開されていた誉田進学塾主催の模試TOP-Sではこの採点基準までしっかりと再現されており、解答に対して非常に丁寧な添削がつくためにその勘所を掴むための非常に重要な資料となっていましたが、残念ながら今年度から非公開化されてしまいました。
この、文系記述問題の採点基準は実は塾でもおそらくあまり対策が立てられていない部分だと思いますが、普段からの学習の中で気をつけているのといないのとでは大きな差につながる可能性があるため、注意が必要です。
以上のような理由から、「まずは一次検査に全力で当たり、ここでなるべく多くの得点を稼ぐ」という作戦は合理的であると考えます。
【意外に時間が残されていない6年生】
これまでにのべた通り、私立中学受験の天王山を2/1とすると、東葛中受検の天王山は12/10。この追い込みの時期の二ヶ月の差は大きく、夏休み明けは私立中学受験で言うところの11月に当たるわけです 。
この点をしっかりと意識して、夏休みからは12月との距離感を意識しながらお子さんの到達点を評価する必要があります。
【受検は繰上げ合格者通知期限まで】
「ゆず母」さんのブログ
http://whiteboard16.hateblo.jp/entry/027
で詳しく分析されていますが、各塾の合格者数の推移を見ると、毎年推定ベースで20-40名前後の合格辞退者が発生する計算になります。
定員の1/4〜1/2もの繰上げ合格が発生する訳で、東葛中受検はこの繰上げ合格まで待って初めて終わると言っても過言ではありません。
そして、私立中学のように合格辞退者を予め見積もらずにきっちり80名にしか合格を出さない東葛中受検において、繰上げ合格は間違いなく立派な合格です。
合格辞退者はどのような顔ぶれなのでしょうか?これは一概には言えないようです。
長女の通っていた小学校では以下のようでした。
初年度(2016年度)、私立中学併願者のうち、東葛中の合格を勝ち取ったのは開成中学に合格したお子さんだけでだったようです。
2017年度、私立中学併願者で東葛中に合格したお子さんはいなかったようです。
まずは長女の歩みについて、表面的な部分を概観しました。
次回以降、より具体的な内容に踏み込んで行ければと思います。
適性検査について
【努力が報われない?努力は必要ない?】
東葛中入学には避けて通れない「適性検査」。
私立中学受験と異なり、
・暗記、先取り学習を必要とせず思考力が問われる。
・記述問題が多い
といった特徴を持つと言われています。
全国の適性検査の中でも千葉県の問題は難易度が高く、上記のような特徴もあって、
「適性検査に対策は通用しない。向き不向きがあって、向いていない子はいくら勉強しても無駄。」
といった悲観論や、また逆に私立中学受験と異なり、「暗記や先取り学習を必要としない」という建前から
「うちの子は賢いほうで適性検査に向いているからあまり勉強しなくても受かるかも。」
といった楽観論を招きがちです。
実際のところ、どうなんでしょうか?
【模試偏差値別合格率実績が示唆するもの】
「公中検模試」
が提供する情報の一つに模試偏差値別の合格率実績がありますが、これによれば東葛中の場合、模試偏差値70(近辺だったと記憶しています)を超える受検者の合格率は非常に高い一方で、模試偏差値60前後から70未満の受検者の場合、模試偏差値と合格率の間に明確な関係性が見られなくなり、模試偏差値に関係なく一律50%前後で落ち着いてしまいます。
つまり東葛中の合格者は明確に二つのグループに分かれます。
一つは、模試偏差値70前後というハードルを超える適性または能力を持ち、かなり確実に合格出来るグループ(「グループA」とします)。
もう一つは、一定以上(模試偏差値60以上、70未満)の適性または能力を持ちつつも、確率50/50という熾烈な競争を行うグループ(「グループB」とします)。
先ほど触れた悲観論も楽観論も、共にグループBを観測して出てきているように思えます。
模試偏差値60台〜60後半というのは公立一貫校受験用の特別コースに通い、かつ自宅学習もしっかりやる「頑張ってる」お子さんたちの平均的な姿ではないでしょうか?
その「頑張っている」グループがそのグループ内での順位をいくら上げても、ハードルを超えてAグループまで到達できないかぎり、グループ内での順位に関係なく確率50/50の合格率にしか結び付かない。
上記のような、「頑張ってそこそこ上位にいたはずなのに報われない」、「一生懸命やっていたあの子は落ちてうちは受かった」という受検者の親御さん達の印象が、過度な楽観論/悲観論に結びついていると考えます。
そもそも何故、このような極端な合格率の分布(とてもできる子達はかなり確実に受かる。できる方だが、とてもできるというわけでもない子達は、どの子が受かりやすいというわけでもない)が出来てしまうのでしょうか?
【メチャクチャ難しい東葛中の適性検査】
簡単に行ってしまえば、東葛中の適性検査は「メチャクチャ難しい」、そして、多くの模擬試験はその難易度や受検者たちの得点分布を十分に再現できていないということだと考えています(模試の目的も様々で、もちろん再現性の高さが唯一の評価基準ではありませんが...)。
ちなみに昨年度まで上記の点で飛び抜けて完成度の高い模試を提供していた、千葉市を本拠地とする誉田進学塾のTOP-S誉田進学塾グループのWeb Siteは残念ながら今年から非公開模試となってしまいました。
東葛中合格者のボーダーラインは100点満点に直すと45から50点程度
一次試験受検者の平均点は100点満点に直すと20点程度
平均20点、ボーダーライン45-50点というのはかなり難しい試験で、大学入試センター試験や公立高校入試のような一般的な試験とは質的に異なると言えます。
東葛中受検を検討している親御さんには是非一度、ご自身で県立千葉中・東葛中の過去問題を制限時間通りに解いて頂きたい思います。
「知識や先取り学習を必要とせず、考えれば解ける問題」という建前ですので、物事を筋道立てて考える訓練を積んでいる大人であれば、十分な時間をかけることで正解にたどり着ける問題ばかりです。
しかしこれを45分以内に解くとなると話は別です。初めて解く方は問題文を読むだけでも骨が折れるのではないでしょうか?そしてその大変さは、実際に時間制限を設けて解いた人にしか分かりません。
東葛中の問題を「制限時間内に解き切る」には、実はものすごい量の訓練が必要なのです。
...もう一度繰り返します。東葛中の問題は「メチャクチャ」難しいのです。
【難しいテストの特徴】
このような難しいテストの特徴として、①受検者のクロスセクション方向の得点のばらつきが大きくなる、②受検者個人の時系列方向の得点のばらつきが大きくなる、事が挙げられます。
①は、例えば500人がテストを受けた場合に、500人の得点がどのようにバラついているか、受検者横断的(cross section;横断、断面)に見るものです。
平均点が60点前後になるような一般的な試験では平均点のまわりに受験者の得点が集中し、平均点から遠ざかるにつれて受検者の得点も少なくなる、「釣鐘型」の分布をします。
一方、東葛中のように、平均点が20点と低い一方で、合格者のボーダーラインが50点と前後と、平均点から遠く離れたところにあるような試験では、受検者の得点は高い方にも低い方にもバラついた、台形に近い形をした分布になります。
②は同じ受検者が例えば東葛中の過去問を10年分解いた時に(2016年度より前は県立千葉中の過去問)、その得点が安定せず、よくできる時もあれば、あまりよくできない時もある。ということです。
「知識や先取り学習を必要とせず、考えれば解ける問題」とは逆に言えば、知識を積むことで優位に立てるような問題が出ない。すなわち安定的な得点源の無いギリギリの勝負になる。ということを意味しますから、一回一回のテストの出来がばらつくのも納得できます。
このような検査で毎回安定的な点数を取れるお子さんを、やや尺の足りていない一般的な適性検査模試の模試偏差値で測れば「偏差値70以上」ということになりますし、逆にそのような模試で偏差値70未満の領域にあるお子さんは、「かなりできる方だけど、東葛中の適性検査で安定的に得点できるほどの訓練はできていない」 ということになります。
先の過度な悲観論及び楽観論、
「頑張ってそこそこ上位にいたはずなのに報われない」、「一生懸命やっていたあの子は落ちてうちは受かった」
に対して、誤解と批判を恐れずにやや大げさに言ってしまえば、
「お子さんが報われなかったのはたまたま(確率50/50)。でも、合格する確率を50%より大きくするためにはもっと努力が必要だった。」
あるいは
「お子さんはあまり苦労することなく確率50/50で合格する領域に到達することができ、それは合格のための大前提だった。でも、合格したのはたまたま(確率50/50)だった。」
ということになるのです。
【受検のスタンス】
ではこのような適性検査に対して、どのように臨むべきでしょうか?まず、繰り返しになりますが、
①東葛中の適性検査は「メチャクチャ」難しく、それ故に、
②模試偏差値70以上に到達できなければ、合格率を50%超に引き上げることはできない。但し、合格率50%の領域に到達するのはそれほど難しいことではない。
③更に、正しい方向で十分な訓練を積むことで合格率50%超の領域に到達することも可能。但し、凄まじい量の努力が必要。
以上をよく認識しておくことが必要です。
上記をよく認識した上で、どのようなスタンスで受検に臨むべきでしょうか?
1、東葛中単願
これはお子さんが真面目で、合格のために思い詰める性格であればあるほど、おすすめできません。
私立中学でも適性検査対応型の入学試験を取り入れる学校がありますが、単純に偏差値というモノサシで見ると、残念ながらあまり魅力的な学校がありません。
従って東葛中適性検査向けの勉強は私立中学受験には使えません。
適性検査向けの勉強でも算数、理科の計算問題と国語は私立中学受験への応用がききますが、理科、社会の知識問題への対応が出来ないのです。
よって、例えば塾で公立一貫校コースを選択するということは、東葛中一発勝負と同義になります。
そして、合格率50%超の領域に達するのは非常に難しく、その領域に到達できなければ、どんなに頑張っても確率50/50のギャンブルになってしまうのです。
確率50%でも同じような難易度の学校を3校(例えば千葉御三家)受けることが出来れば、どこかに引っかかる確率は1-0.5^3=0.875、87.5%にも高めることができます。
我が家は受検日が近づくにつれて、この一発勝負の理不尽さに押し潰されそうになりました。あの経験は二度と味わいたくありません。
一方、スポーツや習い事など、他に頑張っていることがあったりして、かつ受検に失敗しても大してダメージを受けないような性格のお子さんの場合であれば東葛中単願はおすすめできます。何故なら、合格確率50%の領域であれば割と容易に到達できるからです。そこまでの領域で満足するのであれば、私立中学受験と比べて勉強量も少なくて済みますので、スポーツや習い事との両立も可能です。
検査そのものはギャンブルですが、確率50/50というのは、かけた労力と得られるもののバランスからいえばかなりお得です。
2、私立中学との併願
労力とお金はかかりますが、かけた労力、お金に見合う成果をより確実に得たいなら最も合理的なやり方です。
成長盛りのお子さんですが、やはり受験に注いだ労力の分、何かを犠牲にし、ダメージを被っています。私も最初は「私立中学という逃げ道を作るよりも、中学がダメなら高校でチャレンジすれば良い」位に考えていましたが、夏休み、一日10時間以上勉強する長女の姿を見て、私立中学との併願を選ばなかった事を悔やみました。
3、真面目で、思い詰める性格で、それでも東葛中単願を選択する場合
...まずは、もの凄く険しい道を選択してしまった事をしっかりと自覚しましょう。でも、どんなに険しくてもそこに道は確実に存在していますし、チャンスはあります。
決して結果を出せるお子さんが最初から決まっているような、そんな道のりではありません。「必ずできるようになる。」強く信じて、合格確率50/50の壁を正攻法で乗り越えましょう。
次回以降、長女の実体験を踏まえ、壁を乗り越える方法のヒントをご紹介したいと思います。
必ず目を通しておきたいオススメBlog(その1)
東葛中受検を行うにあたり、必ず目を通しておいていただきたいオススメ ブログの一つ目が以下です。
お子様が東葛中(第一期生)に通っていらっしゃる「ユズ母」さんによるブログ。14のテーマ別記事と、その後付け加えられた6つの記事(2017年3月現在)から構成されています。
大学入試改革と東葛中に期待される役割のような大きなテーマから、東葛中の授業の様子・学校生活のようなミクロなテーマ、はたまた二次検査後の辞退者数の推定まで、非常に多岐に渡って詳細にまとめられており、このブログを読めば受検から学校生活まで一通りのイメージをつかむことができます。
また、「ユズ母」さんの教育観がとてもしっかりされていて、同じ子を持つ親としてとても参考になりました。
ブログの趣旨(東葛中受検情報の共有)
すっかり春めいてきた今日この頃、桜も月末から4月第一週にかけてが満開期間とのこと。
昨年度は東葛中合格に向けてひた走ってきた長女。
80名の入学者名簿の末席近くになんとか名前を連ねることが叶い、掛け値なしにグータラな時間を過ごせる喜びを満喫しているようです。
平成28年度検査から始まり、今回(平成29年度)でようやく二期生の募集になる東葛中受検。
検査問題を同じくし、平成20年から10年弱の歴史を持つ千葉中とあわせても情報が少なく、「受検を考えているけれども何をしたらよいかわからない」、「合格に至るまでの道筋をイメージできない」とお困りの親御さんは少なくないのではないでしょうか?
あくまで一家庭の受検経験に基づく、ごくごく狭い範囲での情報収集ではありますが、東葛中受検の具体的なイメージを掴んでいただき、今後の対策に役立てていただくことを目的に、東葛中受検に関連したあれこれについて、順次アップさせていただければと考えています。
東葛中受検をお考えの親御さんに少しでも役立てていただけたら幸いです。どうぞよろしくお願いします!