適性検査について

【努力が報われない?努力は必要ない?】

東葛中入学には避けて通れない「適性検査」。

私立中学受験と異なり、

・暗記、先取り学習を必要とせず思考力が問われる。

・記述問題が多い

といった特徴を持つと言われています。

 

全国の適性検査の中でも千葉県の問題は難易度が高く、上記のような特徴もあって、

「適性検査に対策は通用しない。向き不向きがあって、向いていない子はいくら勉強しても無駄。」

といった悲観論や、また逆に私立中学受験と異なり、「暗記や先取り学習を必要としない」という建前から

「うちの子は賢いほうで適性検査に向いているからあまり勉強しなくても受かるかも。」

といった楽観論を招きがちです。

 

実際のところ、どうなんでしょうか?

 

【模試偏差値別合格率実績が示唆するもの】

「公中検模試」

http://kochuken.jp

が提供する情報の一つに模試偏差値別の合格率実績がありますが、これによれば東葛中の場合、模試偏差値70(近辺だったと記憶しています)を超える受検者の合格率は非常に高い一方で、模試偏差値60前後から70未満の受検者の場合、模試偏差値と合格率の間に明確な関係性が見られなくなり、模試偏差値に関係なく一律50%前後で落ち着いてしまいます。

 つまり東葛中の合格者は明確に二つのグループに分かれます。

 

一つは、模試偏差値70前後というハードルを超える適性または能力を持ち、かなり確実に合格出来るグループ(「グループA」とします)。

 

もう一つは、一定以上(模試偏差値60以上、70未満)の適性または能力を持ちつつも、確率50/50という熾烈な競争を行うグループ(「グループB」とします)。

 

先ほど触れた悲観論も楽観論も、共にグループBを観測して出てきているように思えます。

 

模試偏差値60台〜60後半というのは公立一貫校受験用の特別コースに通い、かつ自宅学習もしっかりやる「頑張ってる」お子さんたちの平均的な姿ではないでしょうか?

その「頑張っている」グループがそのグループ内での順位をいくら上げても、ハードルを超えてAグループまで到達できないかぎり、グループ内での順位に関係なく確率50/50の合格率にしか結び付かない。

 

上記のような、「頑張ってそこそこ上位にいたはずなのに報われない」、「一生懸命やっていたあの子は落ちてうちは受かった」という受検者の親御さん達の印象が、過度な楽観論/悲観論に結びついていると考えます。

 

そもそも何故、このような極端な合格率の分布(とてもできる子達はかなり確実に受かる。できる方だが、とてもできるというわけでもない子達は、どの子が受かりやすいというわけでもない)が出来てしまうのでしょうか?

 

【メチャクチャ難しい東葛中の適性検査】

簡単に行ってしまえば、東葛中の適性検査は「メチャクチャ難しい」、そして、多くの模擬試験はその難易度や受検者たちの得点分布を十分に再現できていないということだと考えています(模試の目的も様々で、もちろん再現性の高さが唯一の評価基準ではありませんが...)。

 

ちなみに昨年度まで上記の点で飛び抜けて完成度の高い模試を提供していた、千葉市を本拠地とする誉田進学塾のTOP-S誉田進学塾グループのWeb Siteは残念ながら今年から非公開模試となってしまいました。

 

東葛中合格者のボーダーラインは100点満点に直すと45から50点程度

一次試験受検者の平均点は100点満点に直すと20点程度

 

平均20点、ボーダーライン45-50点というのはかなり難しい試験で、大学入試センター試験や公立高校入試のような一般的な試験とは質的に異なると言えます。

 

東葛中受検を検討している親御さんには是非一度、ご自身で県立千葉中・東葛中の過去問題を制限時間通りに解いて頂きたい思います。

 

「知識や先取り学習を必要とせず、考えれば解ける問題」という建前ですので、物事を筋道立てて考える訓練を積んでいる大人であれば、十分な時間をかけることで正解にたどり着ける問題ばかりです。

 

しかしこれを45分以内に解くとなると話は別です。初めて解く方は問題文を読むだけでも骨が折れるのではないでしょうか?そしてその大変さは、実際に時間制限を設けて解いた人にしか分かりません。

 

東葛中の問題を「制限時間内に解き切る」には、実はものすごい量の訓練が必要なのです。

...もう一度繰り返します。東葛中の問題は「メチャクチャ」難しいのです。

 

【難しいテストの特徴】

このような難しいテストの特徴として、①受検者のクロスセクション方向の得点のばらつきが大きくなる、②受検者個人の時系列方向の得点のばらつきが大きくなる、事が挙げられます。

 

①は、例えば500人がテストを受けた場合に、500人の得点がどのようにバラついているか、受検者横断的(cross section;横断、断面)に見るものです。

 

平均点が60点前後になるような一般的な試験では平均点のまわりに受験者の得点が集中し、平均点から遠ざかるにつれて受検者の得点も少なくなる、「釣鐘型」の分布をします。

 

一方、東葛中のように、平均点が20点と低い一方で、合格者のボーダーラインが50点と前後と、平均点から遠く離れたところにあるような試験では、受検者の得点は高い方にも低い方にもバラついた、台形に近い形をした分布になります。

 

②は同じ受検者が例えば東葛中の過去問を10年分解いた時に(2016年度より前は県立千葉中の過去問)、その得点が安定せず、よくできる時もあれば、あまりよくできない時もある。ということです。

 

「知識や先取り学習を必要とせず、考えれば解ける問題」とは逆に言えば、知識を積むことで優位に立てるような問題が出ない。すなわち安定的な得点源の無いギリギリの勝負になる。ということを意味しますから、一回一回のテストの出来がばらつくのも納得できます。

 

このような検査で毎回安定的な点数を取れるお子さんを、やや尺の足りていない一般的な適性検査模試の模試偏差値で測れば「偏差値70以上」ということになりますし、逆にそのような模試で偏差値70未満の領域にあるお子さんは、「かなりできる方だけど、東葛中の適性検査で安定的に得点できるほどの訓練はできていない」 ということになります。

 

先の過度な悲観論及び楽観論、

 

 「頑張ってそこそこ上位にいたはずなのに報われない」、「一生懸命やっていたあの子は落ちてうちは受かった」

 

に対して、誤解と批判を恐れずにやや大げさに言ってしまえば、

「お子さんが報われなかったのはたまたま(確率50/50)。でも、合格する確率を50%より大きくするためにはもっと努力が必要だった。」

あるいは

「お子さんはあまり苦労することなく確率50/50で合格する領域に到達することができ、それは合格のための大前提だった。でも、合格したのはたまたま(確率50/50)だった。」

 ということになるのです。

 

【受検のスタンス】

ではこのような適性検査に対して、どのように臨むべきでしょうか?まず、繰り返しになりますが、

東葛中の適性検査は「メチャクチャ」難しく、それ故に、

②模試偏差値70以上に到達できなければ、合格率を50%超に引き上げることはできない。但し、合格率50%の領域に到達するのはそれほど難しいことではない。

③更に、正しい方向で十分な訓練を積むことで合格率50%超の領域に到達することも可能。但し、凄まじい量の努力が必要。

以上をよく認識しておくことが必要です。

 

上記をよく認識した上で、どのようなスタンスで受検に臨むべきでしょうか?

 

1、東葛中単願

これはお子さんが真面目で、合格のために思い詰める性格であればあるほど、おすすめできません。

私立中学でも適性検査対応型の入学試験を取り入れる学校がありますが、単純に偏差値というモノサシで見ると、残念ながらあまり魅力的な学校がありません。

従って東葛中適性検査向けの勉強は私立中学受験には使えません。

適性検査向けの勉強でも算数、理科の計算問題と国語は私立中学受験への応用がききますが、理科、社会の知識問題への対応が出来ないのです。

よって、例えば塾で公立一貫校コースを選択するということは、東葛中一発勝負と同義になります。

そして、合格率50%超の領域に達するのは非常に難しく、その領域に到達できなければ、どんなに頑張っても確率50/50のギャンブルになってしまうのです。

確率50%でも同じような難易度の学校を3校(例えば千葉御三家)受けることが出来れば、どこかに引っかかる確率は1-0.5^3=0.875、87.5%にも高めることができます。

我が家は受検日が近づくにつれて、この一発勝負の理不尽さに押し潰されそうになりました。あの経験は二度と味わいたくありません。

一方、スポーツや習い事など、他に頑張っていることがあったりして、かつ受検に失敗しても大してダメージを受けないような性格のお子さんの場合であれば東葛中単願はおすすめできます。何故なら、合格確率50%の領域であれば割と容易に到達できるからです。そこまでの領域で満足するのであれば、私立中学受験と比べて勉強量も少なくて済みますので、スポーツや習い事との両立も可能です。

検査そのものはギャンブルですが、確率50/50というのは、かけた労力と得られるもののバランスからいえばかなりお得です。

 

2、私立中学との併願

労力とお金はかかりますが、かけた労力、お金に見合う成果をより確実に得たいなら最も合理的なやり方です。

成長盛りのお子さんですが、やはり受験に注いだ労力の分、何かを犠牲にし、ダメージを被っています。私も最初は「私立中学という逃げ道を作るよりも、中学がダメなら高校でチャレンジすれば良い」位に考えていましたが、夏休み、一日10時間以上勉強する長女の姿を見て、私立中学との併願を選ばなかった事を悔やみました。

 

3、真面目で、思い詰める性格で、それでも東葛中単願を選択する場合

...まずは、もの凄く険しい道を選択してしまった事をしっかりと自覚しましょう。でも、どんなに険しくてもそこに道は確実に存在していますし、チャンスはあります。

決して結果を出せるお子さんが最初から決まっているような、そんな道のりではありません。「必ずできるようになる。」強く信じて、合格確率50/50の壁を正攻法で乗り越えましょう。

 

次回以降、長女の実体験を踏まえ、壁を乗り越える方法のヒントをご紹介したいと思います。