振り返り「長女との対話」編 その2
【「対策で出来ることは半分」の意味】
最初に、「対策で出来ることは半分」という言葉の意味について私の考えを明確にしたいと思います。
まず、
千葉・東葛中適性検査では、一般的な私立中学入試よりも「ものの考え方や、身の周りにある社会との接点への関心、自分を客観的に見つめ直すことのできる視点」が重要であり、それを養うために「自分とは異なる視点、考え方を持つ人との対話を通じた論理力・思考力の訓練」の重要性、寄与度が高い。
という事は明確に言えると考えています。
但しそれは、
千葉・東葛中受検に合格するためには幼少からの家庭教育と、その結果としてのお子さんの能力・資質が決定的に重要で、たかだか2年程度の対策・努力でカバーできるものではない。即ち、受検の前から、「受かる子」、「受からない子」はある程度決まってしまっている。
ということでは決してないと考えています(そしてこれは、東葛中受検に関する私の一貫した、譲れない考え方です)。
【親が子供を伸ばせる可能性が半分もある!】
小学5年生から受検対策に取り組むとして2年間。この時期のお子さんは伸び盛りで、対策を通じて触れる問題、文章、テーマ、図表はお子さんの関心を、暗記・解法習得型の自己完結的な勉強から、問題解決・表現型の相互作用的な勉強へと開く大きなチャンスだと考えます。
別に幼児教育に取り組んだり、特別な訓練をしたりする必要はなくて、受検対策に取り組みながら子供と向き合う時間を増やし、親御さんご自身のモノの見方をお子さんにぶつけて刺激を与えてあげれば良いだけだと考えます。
そしてお子さんがこれから取り組もうとする適性検査問題で扱われるテーマは、親御さんと共有し、取り組むのにうってつけなのです。
「対策でできることは半分」と捉えるよりもむしろ、「親が子供を伸ばせる余地が半分もある」と捉え、受検対策という特別な時間を利用してお子さんとのコミュニケーションを増やしてみてはいかがでしょうか?
【文系総合問題対策で取り組んだテーマ】
文系総合問題対策は基本的には塾にお任せし、私は長女が家で独習を行っている際に「解答例にはこう書いてあるけど、自分の解答でも良いか?」とか「解答例にはこう書いてあるけど、こんな考え方もあるのではないか?」といった質問に答えた程度で、長女が取り組んだ対策の全部を把握しているわけではないのですが、長女が文系総合問題対策で取り組んだテーマは、
食料自給率、人口問題、環境問題、二酸化炭素排出量、輸送・交通、日本の林業、電気・発電、昼間人口と夜間人口、ごみ問題、情報について、生乳生産量と地域、バイオガソリン、フードマイレージ、社会・生活の変化と大学進学、バーチャルウオーター、医療問題、自動車の生産
と、私たちの仕事や生活に関わりのある事柄ばかりです。
子供とのコミュニケーションをとるのにうってつけと言えるのではないでしょうか?
【池上彰になる必要はなく、大人の見方をぶつけてあげれば良い】
別に池上彰さんのように、時事問題の背景を鮮やかに整理したり、正しい知識を即答することが求められているわけではないという点に気をつけましょう。
上記のように考えてしまうと、子供からの質問がプレッシャーとなって対応するのが億劫になり、逆に子供からの質問を避けるようになってしまいます。Wikipediaやニュースサイト、ブログなど、インターネットで関連するサイトを探して難しい言葉を言い換えてあげたり、ご自身のお仕事を通じた経験、感想を交えながら一緒に考えてあげるだけで良いのです。
社会で働いたり、家計をやりくりした経験がなく、これからそうなるために専ら知識や知恵を蓄える段階にあるお子さんと、すでに蓄えた知識や知恵を使って変化する環境にに対応し、行動していかなければならない大人とでは上記のようなテーマの受け取り方や考え方に違いがあります。
上記のようなテーマに関連して親御さんのお仕事まわりや生活でどのような影響、変化があったのかを話してあげるだけで、お子さんのモノの見方に広がりが生まれ、より深く考える姿勢を身につけてくれます。そしてそのちょっとした知見の広がりが、伸び盛りのお子さんに大きな成果をもたらすと私は考えています。
【記述演習で取り組んだ文章】
塾では、文系総合問題対策とは別に、二次検査も見据えた記述問題演習に取り組んでいました。文章を読み、簡単な読解問題に答えた後、400〜500字程度の作文問題を解く形式でした。
以下は、記述問題演習で取り上げられた文章です。
田中優子「グローバリゼーションの中の江戸」岩波ジュニア新書
及川和男「森は呼んでいる」
池内了「私のエネルギー論」
高田宏「森が消えるとき」
藤倉良「エコ論争の真贋」
日高敏隆「人間はどこまで動物か」
松沢哲郎「想像するちから」
正高信男「ヒトはなぜヒトをいじめるのか」
川端裕人「てのひらの中の宇宙」
外山滋比古「わが子に伝える『絶対語感』」
外山滋比古「ことばの教養」
清水義範「行儀よくしろ」
森本哲郎「日本語 表と裏」
中西進「日本人の忘れもの」
五木寛之「こころ・と・からだ」
俵万智「りんごの涙」
畑村洋太郎「失敗学のすすめ」
田中修「植物のあっぱれな生き方」
立川昭二「『気』の日本人」
稲垣栄洋「雑草は踏まれても諦めない」
最相葉月「特別授業3.11君たちはどう生きるか」
木下是雄「理科系の作文技術」
養老孟司「メッセージのメッセージ」
山崎充哲「タマゾン川 多摩川でいのちを考える」
福井謙一「学問の創造」
羽生善治「大局観」
文系総合問題で扱われるテーマともリンクした、素晴らしい書き手による文章が厳選されており、大人が読んでみても非常に興味深い文章です。厳選された文章の、しかもエッセンスの部分が使われているため、この記述問題演習はファイルに保存してありますが、これも、お子さんとコミュニケーションをとるのに最良の素材だと考えます。
【まとめ】
東葛中適性検査対策、とりわけ文系総合問題や二次検査の作文問題で取り上げられるテーマ、教材は親御さんの仕事や生活とも関わりの深い問題ばかりで、しかも良質のテキストが揃っています。
東葛中受検は決して、受検前から、「受かる子」、「受からない子」が決まってしまっているようなものではありません。
「対策で出来ることは半分」という言葉は「親が子供を伸ばせる可能性が半分もある!」という言葉に捉え直して、適性検査対策に取り組む期間を、良質な教材を媒介に子供とのコミュニケーションを増やすチャンスに変えることが重要だと考えます。